クライマックスシリーズの問題点は? 元応援団員が改善案を考える

おはようございます、元応援団員のハルカです。


プロ野球にすっかり定着したクライマックスシリーズ(CS)。

導入当初は多くの反対意見がありました。

多くのチームとそのファンがこの制度のメリットとデメリットそれぞれを経験し終えた昨今、だいぶこの制度が好意的に受け止められて、賛否の議論が落ち着いているふうに見えます。


せっかく落ち着いた論争をまた蒸し返すような話題になりますね。

でも、まだまだ改善の余地が残されているのも事実です。


今回はこのクライマックスシリーズのメリットとデメリットをおさらいしたうえで、応援団の目線も含めて、今後こうあって欲しいなと思うようなことを書いてみたいと思います。




クライマックスシリーズの概要

クライマックスシリーズは、日本シリーズに出場するチームを決定するトーナメントです。

ペナントレースの上位3球団によって行われます。

セ・パで大きな違いはありません。


まずは、ペナントレースの2位と3位が試合をします。

これはファーストステージと呼ばれています。

2勝先取。

2位チームの本拠地で行われます。


次に、『ペナントレースの優勝チーム』と『ファーストステージの勝者』が試合をします。

これはファイナルステージと呼ばれています。

4勝先取で、優勝チームの本拠地で行われます。

優勝チームは、アドバンテージとして1勝が先に与えられているので、実質は3勝すれば勝ち上がりできます。


この制度の最大の特徴は、『ペナントレースで優勝したチームが日本シリーズに行けない場合がある』ということです。

2位以下のチームが日本シリーズに行く場合、『下剋上』などと表現されます。


優勝チームとしては納得がいかないし、下位チームには夢と野望に満ちあふれるような制度と言えます。

2020年までで、セ・パ両リーグとも、2位のチームが2回、3位のチームが1回日本シリーズに出場しています。




クライマックスシリーズのメリット

クライマックスシリーズには、次のようなメリットが挙げられます。

・消化試合が減る
・試合数が増える
・チームが強くなる


1つずつ見て行きます。


消化試合が減る

シーズン終盤になると、多くのチームは首位から徐々に引き離され、しだいに目標を失い始めます。

まして首位チームが独走している場合なんて、『最後の1か月はリーグ全体がすべて消化試合でした』なんてことにもなります。


一方、これが『Aクラス争い』になってくると、だいたい最後までもつれます。

どこかの順位が最終戦までもつれるなんてこともザラです。

クライマックスシリーズ制度を導入すると、『最後まで目標のあるチーム』が増えます。

そうすると、今まで消化試合だった試合が天王山にもなるわけです。

当然、ファンも盛り上がるし、経営面でも大幅な収益の増加が見込めます。


試合数が増える

クライマックスシリーズの制度ができたことで、試合数が増えました。


クライマックスシリーズがなければ、143試合が終わった時点でシーズンは終了です。

残すところ、両リーグの優勝チーム同士による日本シリーズのみです。


ここに、クライマックスシリーズファーストステージ、ファイナルステージという新たなイベントが組み込まれました。

ファンとしては、観られる試合数が増えることで、それだけ楽しみが生まれることになります。

まして、1試合1試合が白熱必至の短期決戦です。


これは経営サイドにとっても美味しい話です。

クライマックスシリーズともなれば、どの試合も球場は満員になります。

優勝チームにとってクライマックスシリーズは厄介な制度だと思いがちですが、経営者から見れば、そう悪い話とも言えない魅力があります。


チームが強くなる

クライマックスシリーズは1戦1戦に緊張感がある大事な試合になります。

試合数が少ないという点では、日本シリーズ以上に『絶対に負けられない』過酷な試合とも言えます。


そんな大一番の試合を経験すれば、当然チームは鍛えられ、強くなります。

ペナントレースのような長丁場とは違う戦い方も求められるので、短期決戦にも強くなります。




クライマックスシリーズのデメリット

クライマックスシリーズには、次のようなデメリットが挙げられます。

・ペナントレースの価値が下がる
・消化試合が減る
・選手の酷使に繋がる
・秋季キャンプができない


これもまた1つずつ見て行きます。


ペナントレースの価値が下がる

最終的にクライマックスシリーズを制したチームが日本シリーズに出ることになります。

「じゃあ長いペナントレースはいったい何だったんだ」という声はどうしても出てしまいます。

『リーグ優勝したチームが日本シリーズに出場できない』という状況がしばしば起こりますが、そのたびにこの議論は再燃します。


その場合も『ペナントレースで僅差の2位だったチーム』が日本シリーズに行くなら、そこまで優勝チームのファンの反発はありません。

ところが『ぶっちぎり優勝したのに日本シリーズに出場できない』『借金のあるチームが日本シリーズに出場する』となると、優勝チームのファンとしては納得がいかないものになります。


また、表立って目立つようなチームはありませんが、『優勝争いを諦めて2、3位狙いに切り替える』というチームが現れかねないのもデメリットの一つです。

無理して首位のチームに勝ちに行くより、首位より力が劣るCS争いのライバル球団から勝った方が、クライマックスシリーズに行ける確率が上がります。

そうすると、首位チームではなくCS争いのライバル球団にエース級投手をぶつけたり、首位チームそっちのけで激しいバトルが繰り広げられたりします。優勝よりもそっちに注目が集まることもあります。


優勝が決まった状況ならともかく、マジックがまだ2桁残っているような時期にこれをされると、本来もっとも価値のある『ペナントレース1位』という順位が軽く扱われてしまいます。


幸い、優勝が確定していない時点であからさまにクライマックスシリーズ狙いにいくチームは今のところ見られません。

ただ、そう勘ぐられるようなケースは多く見られます。


首位のチームが放置され、2~4位くらいの球団がバチバチやりあう展開も珍しくありません。

かつては首位チームに対して他球団から『警戒網』が敷かれ、表ローテをバンバンぶつけるのが普通でした。

今では、首位チームがちょっと引き離すともう2位以下が追ってこず、下でAクラス争いが始まります。

結果的にペナントレースが先行逃げ切りしやすくなっている傾向は否定できません。


これらを総じて、『クライマックスシリーズがペナントレースの価値を下げている』と言えそうです。


消化試合が減る

消化試合には、じつはプラスの側面もあります。

そのプラス要素がなくなることが、クライマックスシリーズのデメリットの一つです。

消化試合がなくなることの最大のデメリットは、『若手に切り替えるチャンスを逸する』ことです。

クライマックスシリーズの可能性が残されている以上、負けられない戦いが続いていきます。

そうすると、一軍の試合の中で若手を試す余裕が減ってきて、若手の出場機会を奪ってしまいます。

若手の起用だけでなく、コンバートとか新たな戦術など、テストとか来年を見据えた起用というのがしづらくなります。

これが、世代交代を遅らせる要因になりえます。


選手の酷使に繋がる

若手が出場できないこととは反対に、主力メンバーは休めない試合が続きます。

これが、選手の酷使に繋がります。


顕著なのは投手陣です。

『短い登板間隔での先発』、『いつもより多い球数』、『リリーフ投手の連投』、『イニングまたぎ』がそれに当たります。

同様に、野手も故障を押して出場したり、ベテランがフル出場したりと、主力選手への負担がどうしても大きくなってしまいます。

イチかバチかの場面では、ケガと隣り合わせの危険なプレーや、身体に無理を強いるようなプレーも続出します。


このように、消化試合にもそれなりの意味や価値があります。

本来、消化試合が減ることはメリットが多くていいことですが、「負けてもいい試合」がまったくなくなってしまうことも、それはそれでデメリットがあるので、難しいところです。


秋季キャンプができない

クライマックスシリーズの出場チームは、日程の都合上、秋のキャンプはできなくなります。

12球団のうち、半数の6球団がキャンプできないというのは、多い気がします。


『秋のキャンプが、もっとも自分を伸ばせる』と言った監督もいました。

チームの強化ができないことは、翌年以降の成績に影を落とします。




これからのクライマックスシリーズの在り方

ここまで浸透した制度を、今さらなくすことはできないと思います。

しかし、冒頭でも述べたとおり、この制度にはまだまだ改善の余地があります。


一番直すべきは、アドバンテージの内容でしょう。

この制度のデメリットも、主な反対意見も、けっきょく『アドバンテージの在り方が不適切』ということに尽きると思います。


クライマックスシリーズの現行制度では、シーズン1位だったチームに、アドバンテージがついています。

アドバンテージの内容は、勝率やゲーム差とは関係なく、一律です。

優勝チームのアドバンテージ
・1勝
・全試合本拠地開催
・下位チームはファーストステージから中1日でファイナルステージ


どれも大きなアドバンテージではあります。

しかし、それがペナントレースで優勝したことと見合うかとなると、ケースバイケースです。


ペナントレースがもつれていて、1位と2位のゲーム差がほとんどない状態なら、これくらいのアドバンテージが適当です。

しかし、1位と2位が大差だった場合。

たとえば10ゲーム差離れていたのが、たった1勝のアドバンテージになるのは妥当でしょうか。

言い換えると、一気に9ゲーム差を詰められたのと同じことです。

これは、1位チームとしては受け入れにくいことだと思います。


あるいは、借金のある3位のチームが勝ち上がって来た場合。

ペナントで負け越したチームが日本一というのも、納得しづらい心情になります。


このように、ペナントのゲーム差や勝率を無視して一律のアドバンテージを設定するやり方は、制度の導入当初から問題視されていました。

そして、その懸念が現実となるたびに、この議論は再燃しています。


改善するとしたら、ペナントレースの結果に応じてアドバンテージの内容を調整するというやり方がありそうです。

たとえば、

『3ゲーム差までは現行制度のアドバンテージのまま。そこからゲーム差が1つ離れるごとに新たなアドバンテージが追加される』

とか、そういうやり方です。


大差の場合に備えて、アドバンテージの項目はたくさん用意しておく必要がありそうです。

ここに僕が勝手に考えた私案を示してみます。

追加されるアドバンテージの例(案)
・試合前の練習時間の長さに差をつける
・挑戦者側のみ予告先発
・挑戦者側のみ予告スタメン
・ベンチ入りできる人数に差をつける
・登録抹消から登録可能期間までの日数に差をつける
・外国人枠の人数に差をつける
・リクエストできる回数に差をつける
・監督が抗議できる時間に差をつける
・1位チームは指名打者制、挑戦者側は指名打者なし


これが子供の草野球なら『片方が4アウト制』とか『5点リードから試合開始』などのめちゃくちゃな設定もありそうですが、プロでそれは難しかろうと思うので、そういうアイデアは棄てることにしました。


応援団的発想では、挑戦者側のトランペットの本数や太鼓の制限など、鳴り物の一部を取り上げることでスタンドの熱気に差をつけることもできますが、やっぱり僕にとっては相手側であっても応援団の熱気が削がれることは本意ではないので、このアイデアも却下です。


ちなみに『10ゲーム以上離れたらクライマックスシリーズは開催しない』みたいな案もたまに聞きますが、予定を組んでおいた試合を『開催しない』というのは現実的ではないでしょう。

同じ理由で、『1勝のアドバンテージを2勝に引き上げる』も個人的にはあまり好みません。

それも試合数の減少に繋がります。

試合を減らすような対策ではなく、何かしらルール上の差(ハンデ)をつけたうえで試合を開催した方がいいと思います。

1位と2位以下にゲーム差が大きく開いたなら、試合の中で『これはキツイだろう』と思えるアドバンテージを設ければ、両チームとも納得いくと思います。




応援団にとってのクライマックスシリーズ

応援団員にとっても、クライマックスシリーズはめちゃくちゃ気合いが入る試合になります。

クライマックスシリーズは、どの試合も球場の雰囲気がものすごく良いです。

選手、ファン、応援団員それぞれ緊張感と興奮が今にも弾けそうなくら充満しています。

試合前からあんなに緊張&興奮状態でいられるような試合は、滅多にありません。

そうした中で応援活動ができるというのは、応援団としては最高の舞台です。

日本シリーズ以外にこんな機会を与えられることは、かなり恵まれていると言えます。


まあ、時間的にも金銭的にも、大変になると言えば大変にはなります。

クライマックスシリーズは12球団中6球団が出ることになるので、多くの球団にとって関わりがあります。

強豪チームになると、クライマックスシリーズは毎年恒例の行事になりますし、その後に続く日本シリーズも出場となると、この間の仕事だったり家族サービスだったりはしばらく休業ということにもなりかねません。

ただ、それをうまくやりくりするのも応援団員の腕の見せ所でもあります。

また、そういう苦労をしてまで行くだけの価値もあります。


クライマックスシリーズによって、応援団員も磨かれ、鍛えられ、そして存分に楽しむことができています。


結論的に、応援団にとってクライマックスシリーズは大変ありがたい制度です。

今後もずっと続けて行って欲しいと思っています。

アドバンテージ内容を見直すのであれば、『ゲーム差が離れたら開催なし』とか『○ゲーム差以上離れたらアドバンテージを2勝にする』など、クライマックスシリーズの試合数が減るような改正案はやめて欲しいです。

あくまで、試合数を減らさずに、上位チームが優位になるようなアドバンテージを考案して欲しいところです。




まとめ

クライマックスシリーズは、日本球界にすっかり定着しました。

消化試合の減少や下位チームの救済など、メリットは様々あります。

球団にとっても、増収という大きなメリットがあります。

今なおこの制度への反対意見はありますが、今さらこの制度を廃止するという選択肢はもうないでしょう。


もちろん、デメリットもあります。

この制度のいい部分は残したままで、そろそろデメリットの改善に向けての動きも欲しいところです。


クライマックスシリーズがよりよい制度になって、少しでもみんなが納得して気持ち良く応援できるように発展することを願っています。


以上、『クライマックスシリーズの問題点は? 元応援団員が改善案を考える』でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。