プロ野球にはどんなコンバートがある? 理由や成功例を解説
おはようございます、元応援団員のハルカです。
野球選手が、自分の守備位置を変更することを『コンバート』と言います。
コンバートは珍しいことではなく、12球団を見渡せば毎年どこかしらで見かけます。
『投手から野手へ』『内野から外野へ』など、過去にも数えきれないほどの例もあります。
コンバートで成功した選手もたくさんいます。
よく見かける『セオリー的なあるあるコンバート』もあれば、過去にあまり例を見ないような『奇抜なコンバート』もあります。
今回は、プロ野球にありがちなコンバートやその理由、さらには成功例や現役選手の事情なんかを見て行きたいと思います。
コンバートの理由
コンバートするには、何かしらの理由があります。
理由は一つだけとは限らず、複合的な場合もあります。
よくある、主なコンバートの理由を挙げてみましょう。
チーム事情
チーム事情でのコンバートはよくあります。
たとえば、レギュラー争いに敗れた選手が別のポジションに移る場合です。
レギュラー争いに敗れた選手が、そのポジションで控えとしてやっていくのか、それとも別のポジションに移ってレギュラーを目指すのか。
後者を選択した場合が、チーム事情によるコンバートと言えます。
新戦力の加入や若手の台頭などにより、元々のレギュラー選手がポジションを追いやられる光景はよく見られます。
空きを埋めるためのコンバートというのもあります。
『センターが空いている』『二塁手がいない』という理由で、他のポジションのレギュラー選手を空白のポジションに当てはめることもあります。
本人の適性
本人の適性をより活かすためのコンバートがあります。
今まで守っていたポジションより、さらに活躍が見込まれるポジションがあるということです。
たとえば『足の速さ』や『肩の強さ』が武器の選手が、そうした身体能力の高さを活かせるポジションに移る場合がそうです。
身体能力以外にも、ポジションによって求められる性格とかセンスとか考え方、動きの良さというものがあるので、選手によって適性が違うのは当然です。
それを見出してコンバートされるので、より一層の活躍が見込まれています。
他の理由としては『守備の負担を減らす』というものがあります。
その理由をさらに深掘りすると、『打力を活かすため』であったり、『ケガや年齢で守備力が低下したため』であったりします。
活躍の可能性を拡げる
今までのポジションでは活躍できなかった、あるいは頭打ちになった選手が、今後飛躍するために新たなポジションに活路を見出すために挑戦する場合があります。
上で挙げた『チーム事情』と『本人の適性』をミックスしたような場合もあります。
チーム内で手薄なポジションがあるとか、元投手が肩や俊足などの身体能力の高さを活かして野手に転向するというケースもたくさんあります。
よくあるコンバート
コンバートにはセオリーのようなものがあります。
決まり事があるわけではないですが、比較的容易にコンバートしやすい組み合わせというものがあります。
野球界でよく見かけるコンバートをいくつか紹介してみましょう。
投手から野手へのコンバート
投手から野手へ、というのはよく見られるパターンです。
投手としては活躍できない(あるいはケガで投手を断念する)場合、野手に活路を見出す選手は大勢います。
投手は、そもそも高い身体能力を持っています。
アマチュア時代、四番でエースだった選手も大勢います。
一般的に、投手は『肩が強い』『足が速い』『握力が強い』『背筋力が強い』『瞬発力がすごい』などの身体的強さをもった選手が多いので、野手としてこれらの能力を活かすことができます。
現役選手では、糸井嘉男選手や雄平選手が投手から野手にコンバートして成功しました。
また、中田翔選手、今宮健太選手、根尾昴選手のように、アマチュア時代に投手経験がありつつ、野手としてプロ入りしたという選手も大勢います。
イチロー選手も高校時代は投手でした。
捕手から外野へのコンバート
捕手から外野へのコンバートも時々見かけます。
そのほとんどは、打力を活かすという理由がメインです。
もう少し背景を説明すると、捕手は『経験値』がモノを言うポジションなので、『ベテランのレギュラー捕手』がチームにいた場合、若手がそこからポジションを奪うのは容易ではありません。
このため、打力がある若手捕手が出場機会を得るために他のポジションに流れやすくなっています。
このほか、厳しい言い方をすれば『捕手失格』の烙印を押されてコンバートされる選手もいます。
過去の例では飯田哲也選手、山崎武司選手、和田一浩選手などが捕手から外野に転向し、リーグを代表する外野手になりました。
現役選手では、近藤健介選手や福田永将選手が元々捕手でした。
栗原陵矢選手、坂倉将吾選手は、捕手としての可能性も残しているようですが、外野でもたびたび起用されています。
同様に、大城卓三選手やアリエル・マルティネス選手は捕手と一塁手を兼任しています。
内野でのポジション変更
内野の中でポジションを替わる選手も多くいます。
いちばんオーソドックスな変遷パターンは『ショート → セカンド → サード』です。
プロ入り時にショートとして入団する選手は、だいたい脚力とか肩に自信がある選手が多く、動きも溌剌としています。
そして、プロとして何年も野球をしていく中で、プレーヤーとしての特徴が徐々に変わっていきます。
パワーやスタミナを身につけるのと引き換えに、スピードを失うのはよくあるパターンです。
あるいは、度重なる故障により、足や肩の能力を失う選手もたくさんいます。
大きなケガがなくても、年齢を重ねることで足とか肩は衰えます。
こうして、ショートからセカンドへ、セカンドからサードへと、より負担の小さいポジションへと移り変わっていくわけです。
ショートは守備範囲も広く、脚力や肩の強さも求められます。
身体への負担が内野でもっとも大きいポジションです。
セカンドは一塁への距離が近くなる分だけショートより負担は軽いものの、やはり負担の大きなポジションです。
セカンドはサードより足も肩も求められます。
なぜ、セカンドがサードより肩の強さが求められるかというと、『無理な態勢から送球する』『併殺に関与する』『外野手の送球をカットする』という場面が多いからです。
この『ショート → セカンド → サード』のコンバートは、内野手として自然な流れでの転向です。
過去には立浪和義選手、今岡誠選手などがこの順番にコンバートしていきました。
現役選手では、鈴木大地選手がこのパターンに当てはまっています。
また、
浅村栄斗選手(ショート → ファースト → セカンド → ファースト)
安達了一選手(ショート → セカンド)
内川聖一選手(ショート → セカンド → ファースト、外野)
中島裕之選手(ショート → サード → ファースト)
鳥谷敬選手(ショート → サード)
茂木栄五郎選手(ショート → サード)
などがこれに類するコンバートを行っています。
内野から外野へのコンバート
内野手が外野にコンバートする例もたくさんあります。
内野からあぶれるケースもあれば、高い身体能力を外野で活かすケースもあります。
あるいは、性格的な適性もあるかもしれません。
現役選手では、福留孝介選手、西川遥輝選手、福田周平選手、梶谷隆幸選手、陽岱鋼選手など、多数見られます。
2022年から監督に就任する新庄剛志氏も元々は内野手でしたが、メジャーで活躍するほどの外野手になりました。
投手の役割分担の変更
ひとくちに投手といっても、役割は細分化されています。
ざっくり言うと、『先発』『中継ぎ』『抑え』の3つに大別されます。
投手がこうした役割を変更する場合、コンバートと表現されることがあります。
クローザーが先発転向したり、先発投手が中継ぎになったりする場合を指します。
あくまで同じ『投手』なので、厳密にコンバートとは言えないかもしれません。
現役投手では、山口俊投手、増井浩俊投手らが抑えから先発転向しました。
また、能見篤史投手など、先発から中継ぎに転向した例もあります。涌井秀章投手も一時的にリリーフに回っていました。
大竹寛投手、牧田和久投手、平野佳寿投手など、ひとおおりのポジションを経験してきた投手も大勢います。
珍しいコンバート
先ほどはよくあるコンバートを挙げましたが、逆に、珍しいコンバートもあります。
過去にあまり例を見ないコンバートを紹介してみます。
投手へのコンバート
投手を断念して野手にコンバートという例がたくさんあるのは紹介したとおりです。
逆に、野手から投手へというのはほとんど聞きません。
それだけ、野手より投手の方がハードルが高いことを示しています。
それでも、野手から投手に挑戦する選手がいなかったわけではありません。
かつて、フェリックス・ペルドモ選手が、野手から投手に転向しました。
といっても完全な転向ではなく、あくまで内野手としてプレーし、たまにマウンドに登るという二刀流のような感じでした。
現役では張奕投手が投手に転向しています。(元々高校時代は投手)
捕手へのコンバート
捕手へのコンバートもほぼ聞きません。
捕手は他の選手に比べて特異な能力を要求されるため、他のポジションから移ってきた選手に簡単には務まらないためです。
かつて、尾崎匡哉選手が内野から捕手にコンバートしました。
ただし、このときはゴロの捕球に課題があった尾崎選手の捕球能力向上を目的とした、一時的なコンバートだったようです。
また、内之倉隆志選手は内野から捕手にコンバートしました。
その後捕手として活躍し、引退後はホークスでブルペンコーチを務められるほどに捕手の道を極めました。
ショートへのコンバート
ショートは、内野で一番負担が大きいポジションです。
それだけ求められるものも大きくなります。
ショートを断念して他のポジションに移るケースはたくさんあります。
逆に他のポジションからショートにコンバートするのは珍しいと言えます。
現役では堂上直倫選手、田中広輔選手がショートにコンバートされてレギュラーになっています。
過去の例では、石井琢朗選手の活躍ぶりが記憶に新しいです。
コンバートから元に戻る例
いったんコンバートしたものの、また元のポジションに戻ってくる選手もいます。
『移った先のポジションに適性がなかった』『チーム事情が変わった』など事情はそれぞれです。
現役では森友哉選手、中田翔選手、岡島豪郎選手らがコンバート後に元のポジションに復帰しています。
過去の例では、アライバで知られる荒木雅博選手と井端弘和選手が一時的にセカンドとショートのポジションを入れ替わり、数年後に元に戻りました。
監督の立浪和義氏、矢野輝弘氏も一時的に外野に移り、その後元々いたポジションに復帰した経験があります。
近年の傾向
レギュラー以外の選手は、出場機会を増やすために複数ポジションを守る選手が多いです。
近年、レギュラー選手であっても、ツープラトンや1人2ポジション制など、複数ポジションを守りながらレギュラーを張る姿をよく目にします。
完全なるコンバートではなく、試合展開やメンバーによって柔軟に守備位置を替えているという起用法です。
現役選手では、大和選手、ネフタリ・ソト選手、中村晃選手、T-岡田選手、大城滉二選手、外崎修汰選手らが内野と外野を兼ねて複数ポジションを守りながらレギュラーを張った経験があります。
まとめ
野球選手にコンバートはつきものです。
最初から最後まで一つのポジションだけを守り通す選手というのもそんなに多いわけではなく、多くの選手がコンバートや複数ポジションに取り組んでいます。
内野手は特に顕著です。
上で書いたように、ショートとして入団した選手も、やがてセカンド、サードなどに移ったり、あるいは外野手に転向したりします。
コンバートによって活路を見出す選手もたくさんいます。
毎年、どこかのチームではコンバートに取り組む選手が見られます。
守備位置変更は大変なことではあるけど、多くの選手が活躍の場を広げ、コンバートを成功させることを願っています。
以上、『プロ野球にはどんなコンバートがある? 理由や成功例を解説』でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。