キャッチャーのすごさはどうやってわかる?【捕手の評価方法を解説】

おはようございます、元応援団員のハルカです。


『9つの守備位置の中でもっとも評価が難しいのはどこ?』

と言われたら、多くの人がキャッチャーを挙げそうです。


なぜ評価が難しいかと言うと、捕手の能力や成績は数字に表れにくいからです。


直接捕手に結びつく記録は『盗塁阻止率』、『失策数』、『捕逸数』くらいです。

このうち、『盗塁阻止率』は、投手のクイックの影響が大きいので、単純に捕手の能力だけで残る数字ではありません。

『捕逸』や投手記録である『暴投』も同様に投手の制球力などの影響を受けます。


ほかに、バッテリーとしての優秀度合いを示す成績として『防御率』などもありますが、これも投手力や守備力に左右されるので、どこまで捕手の能力が反映されるかわかりません。


『リード』『フレーミング』も数値化できず、良し悪しを素人が評価することも困難です。


では、評価が難しいポジションにあって、ファンはどのように選手の優秀さを知ればいいのでしょうか。


そこで今回は、もっとも評価が難しい『捕手』を評価し、現役最高のキャッチャーが誰なのか考察してみたいと思います。





他の野手とは違う、捕手の特異性

まずは捕手の良さを紐解くため、捕手の役割から見て行きましょう。


捕手は、守備陣の中でもっとも特殊なポジションです。

他の選手との違いはたくさん挙がります。

他の野手との違い
・向いている方向が違う
・しゃがんで構える
・投手の投球を受ける
・投手に配球を指示する
・防具を付けている
・ファールゾーンを守っている

7人の野手とは大きく役割が異なるわけで、当然問われる資質も違ったものになります。





捕手に求められる役割

捕手には、次のことが求められます。

ざっと見ただけで多くの、かつ重要な内容が含まれているので、捕手の果たす役割がいかに大きいかがわかります。

捕手のレベルは、すなわちチームのレベルにも繋がってきます。


役割1 捕球

捕手は投手の投球を受ける役割を持っています。

一口にキャッチングと言っても、いくつかの要素が絡んでいます。


超絶速いストレートやキレッキレの変化球をキャッチする。

『そんなのプロなら当然』、という意見もありますけども、一流投手の投球を、防具で狭まった視界の中だけで補球するには、高い捕球能力が問われます。


時には投球が左右に逸れることもあるし、ワンバウンドになることもあります。

さらに、打者はスイングして、補球をさらに阻害してきます。

特に、ワンバウンドの球を逸らしてしまうと、走者を進塁させたり、振り逃げさせたりしてしまいます。

捕手の捕球能力が低いと、投手も落ちる球を思い切り投げづらくなります。


また、ただ捕るだけでは務まりません。

しっかりキャッチャーミットの芯で捕球して、良い音を鳴らす必要があります。

(ちなみに、わざと鳴らさない場合もあるそうです。)


また、際どいコースをストライクと判定されるための捕球技術も問われます。

近年、フレーミングという名称で注目を集めています。

単なる『ミットずらし』とは違います。

ミットをずらすとむしろ審判から嫌われて『ボール宣告』されてしまいます。


フレーミングは、『補球時にミットがボールゾーンに流れてしまうとボールと判定されることが多いので、ストライクゾーンの外から内に寄せながらキャッチングすることで、ストライクに見せる。』という感じです。

あくまで、『ボールをストライクに見せる』のではなく『ストライクをボールと判定されない』ための技術です。


ちなみに、ボールを宣告されたあと、そのまま捕球の態勢から固まったままの捕手をしばしば見ます。

ミットをそのまま置いておくことで『このコースだよ?』と審判に無言のアピールです。

気持ちはわかりますけどね。

審判の心証が悪いことは容易に想像できます。

審判に言わせれば、『その位置はお前がミットを動かして操作しただけだろ』となりますし。

ストライク・ボールの判定はリクエストの対象外にもなっているとおり、まず覆りません。

だったら、無言だろうが有言だろうが、抗議なんてしない方がのちのちのためです。


役割2 リード

捕手は、打者を打ち取るための配球を組み立てます。

そして、次に投げる球種だったりコースだったりを投手に指示します。


配球を組み立てるにあたっては、頭脳的な要素が要求されます。

明確な根拠をもち、理詰めで相手を打ち取るということです。


アマチュア野球で捕手経験のある応援団仲間に聞いたところ、

配球の組み立てには3つの考え方があるとのことです。

①投手の持ち味を活かした配球

②相手打者の弱点を突いた配球

③試合展開や状況に応じた配球


『③試合展開や状況に応じた配球』は、同じ投手で同じ打者だとしても、序盤と終盤で攻め方、守り方が当然変わってきます。

例えば同じ無死満塁でも、初回なら1点失うことは許容範囲です。

一打サヨナラの場面で無死満塁だったら、三振か内野フライを求める配球に変わります。

捕手は、この3つの要素をバランスよく考慮しながら、配球を組み立てていきます。


もちろん、目先のアウトだけでなく、試合を通して展開を読むことが要求されます。

特に試合終盤になると、『あと何点まで失っていいのか』『誰からどうアウトを取るか』を考えたうえでリードが組み立てられています。

さらに言えば、この試合だけではなくてシーズンを通したワイドな展開での組み立ても必要になります。


また、投手をリードするのは配球面だけではありません。

精神的にも投手をリードする必要があります。

繊細な感情をもつ投手が多いので、試合状況によってあっちこっちに大きく揺れ動く投手のメンタルをフォローする必要があります。

気持ちよく投げさせるために投球テンポを良くしたり、逆に投げ急ぎを防ぐために間を取ったり牽制を投げさせたりします。

投手が投げたいと思っている球を一発で要求することで、投手を乗せてパフォーマンスを引き出すことができます。

こうして投手を気分的に乗せることも、捕手の大事なリードの一部分です。


捕手が手元でサインを出して、投手がそれを見てうなずいたり首を振ったりするシーンはよく見かけます。

子供の頃はあの姿がかっこよくて、よく真似したものです。

ちなみに捕手が送るサインは、投球の内容だけにはとどまりません。

ピックオフなど牽制球を投げさせるサインもありますし、首を横に振らせるサインというのもあるようです。


役割3 守備全体への指示出し

捕手は、守備の要と言われています。

グランド上の監督と形容されることもあります。

状況に応じて、投手だけでなく、野手にも指示を出す役割があります。


指示内容は、だいたいポジショニングと打球対応に関してです。

ポジショニングは、『どの辺りを守らせたらいいのか』という指示です。

左右に寄らせるとか、浅め深めの調整をします。


打球対応は、例えば『捕ったらどこに投げるのか』とか『どの走者の進塁を一番防ぐべきか』などの指示を与えます。

たとえば2点リードの最終回の守りで走者を2人出したら、1人目の走者を無視してでも同点の走者の進塁防止に注力しなければいけません。

そういう指示や状況確認を、野手全体に与えます。


そのためには判断力も要るし、洞察力も要るし、リーダーシップも要ります。

みんなが熱くなるような場面でも、青ざめるような場面でも、常に冷静でなければ務まりません。


役割4 守備(フィールディング)

捕手も、他の野手同様に守備機会があります。


ただ、打者の後ろに位置している関係上、他の野手とは打球の追い方が異なります。

ゴロをさばくとしたら、『犠打』、『打者の足元に転がるようなボテボテの打球』、『打席付近への高いバウンド』などです。

他の内野ゴロとは質の違った打球です。


基本、捕手が捌く打球は、向かって来る打球ではなくて遠ざかろうとする打球です。

いずれも素早く処理することが求められます。


また、キャッチャーフライという『飛球のなかでもっとも捕球しにくいと言われる打球』を処理しないといけません。

防具が邪魔するし、キャッチャーミットは捕球に適していない。

そういった悪条件の中、ときにはフェンスと接触するリスクを負いながらも確実にフライを捕球することが求められます。


ちなみに、キャッチャーフライを打つのが苦手なノッカーは一定数いるらしいです。


役割5 スローイング

盗塁を刺すことも捕手の重要な役割の一つです。


助走なしの送球になるので、肩の強さがモノを言います。

くわえて、補球から素早く早急するためのフットワーク、正確な位置に投げるコントロールが必要です。

総合すると、かなり高度な送球スキルが求められます。


役割6 ブロック

コリジョンルールの制定によって、ブロックという守備方法はなくなりました。

今度は、コリジョンルールに則って『ベースを空けたうえで走者を刺す技術』が要求されます。


タックルVSブロックという、双方にとって危険なやり取りはなくなったので、それは良いんですが、捕手にとっては新しい技術が要求されるようになりました。

捕球する位置も難しいし、どうしても追いタッチになってしまいます。

クロスプレーをめぐっては捕手の力量が試されてしまいます。





左利きの捕手は難しいか?

捕手に左打ちはいても、左投げはいません。

球史上、いたのかどうかは知りませんが、いたとしても極めて稀なことは確かです。


なぜいないのかと言うと、左投げは捕手に不向きだからです。


左投げが捕手に不向きな理由はいくつかあります。


一つは、盗塁を刺すときのスローイング時の問題です。

右打者の方が多いため、左手で二塁や三塁に投げようと思ったら、打者が邪魔になります。


別の理由では、クロスプレーの時のタッチの問題があります。

走者は捕手から見て左側から突っ込んできます。

左利きだとミットは右手なので、その分タッチが遅れてしまい、不利になります。





結局、捕手に求められる能力は

『2 捕手に求められる役割』で述べた役割を果たせる選手ということになりそうです。

資質として求められるものはいろいろありそうです。

・包容力
・リーダーシップ
・記憶力
・思考力
・慎重さ
・几帳面さ
・洞察力
・肩(フットワーク、正確さ)
・身体の強さ

こういったところでしょうか。

最近、捕手の役割はこれだけにとどまりません。

守備面でこれだけの負担があるにも関わらず、そのうえ打撃での貢献も求められています。


こうしてみると、捕手は本当に大変なポジションだなと感じてしまいます。


おまけに、『抑えたら投手の手柄で、打たれたら捕手の責任』という言葉もよく聞きます。

そのうえ配球を結果論で批判されたら理不尽にもほどがある気がします。


そういうこともあって、レギュラー捕手は高く評価されています。

一度レギュラーを奪うと、多少肩が衰えてきてもしばらくレギュラーとして君臨できるのは、他のポジションとは役割が大きく異なるためなのでしょう。

それだけ正捕手は育てにくく、替えが効きにくいポジションと言えそうです。





現役最高の捕手は誰?

『捕手が固定されないチームは弱い』

などとよく言われます。

近年は捕手2、3人体制を敷いているチームも多くてこの説には反論もありそうですが、過去の優勝チームや常勝チームには固定された正捕手がいることも多く、首肯せざるをえない説得力は十分です。

モチロン、『たまたま強いチームに所属しているだけで、それと捕手の能力とは別だろ』という反論はもっともです。


で、現役選手の中では誰がナンバーワンなのでしょうか。

10数年前は『古田選手だ』『谷繁選手だ』『城島選手だ』とワイワイ議論されていました。

今の現役選手から選ぶとすれば、誰になるでしょう。

打力が高いのは、西武の森友哉選手のイメージが強いです。

打撃タイトルも獲得しましたし。

強肩で鳴らしているのは、ソフトバンクの甲斐拓也選手や読売の小林誠司選手。

フレーミングでは中日の木下拓哉選手あたりの評判が高いです。

総合力が高いのは阪神の梅野隆太郎選手、読売の大城卓三選手、ロッテの田村龍弘選手あたりには凄みを感じます。

経験値で言えば炭谷銀仁朗選手とか嶋基宏選手あたりのベテラン選手にも分がありそうです。

あとは、『どの投手と組むか』という相性もありそうです。


でも、一番は『チームを勝たせること』が大事なわけで、勝てる捕手が最高の捕手という結論になりそうです。

優勝したチームのレギュラー捕手こそ最高捕手だという考えに基づけば、2021年に日本一になった東京ヤクルトスワローズの中村悠平選手でしょうか。

中村選手はリーダーシップにも優れていて、投手をグイグイ引っ張っている姿が何度も映し出されました。

間違いなく、チームを勝利に導いた立役者の一人です。





まとめ

捕手は評価が難しいポジションだけに、想像や聞きかじりに頼った、中身のない説明が目立ってしまいました。

それだけ、捕手というポジションは奥が深いということでしょうか。


プロでも評価基準があいまいということが、いかにこのポジションが難しいかを示しているようでもあります。

これだけの求められた高度な要求を果たせるなら、打力が多少低くても問題ないこともわかります。


そんな捕手の皆さんへのリスペクトをこめて、今日も楽しく野球を観戦しようと思います。

観戦の際は、ぜひ捕手の『表に出てこない苦労』『数字に表れない貢献度』を推し量りながら、応援してみてください。


以上、『キャッチャーのすごさはどうやってわかる?【捕手の評価方法を解説】』でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。