打率の計算方法は? OPSって何? 野球の指標の計算方法まとめ
おはようございます、元応援団員のハルカです。
野球には、様々な記録があります。
その中には、『割合で表した記録や指標』がたくさんあります。
たとえば『打率』とか『勝率』なんかがそうです。
『防御率』なんかも、ふだん当たり前のように扱う数字です。
『打率が3割を超えていたら優秀』だとか、『2割5分を切っていたら物足りない』とか、『防御率が4点台では不安定』だとか、何となく数字の水準については一般的に浸透していると思います。
しかし、正確な計算方法についてはどうでしょうか。
『出塁率って犠打は含めないんだっけ? じゃあ、犠飛は?』
『長打率は分母が打席数だったか打数だったか・・・』
など、意外と知らない場合もあるし、間違って解釈している場合もあります。
また、マニアックな指標もたくさんあります。
『OPS』とか『K/BB』とかですかね。
そもそも何を表す指標なのかを知らない人もいるでしょうし、どの程度の数字を残せば優秀と言えるのかという相場がわからない人もいると思います。
そこで、今回は野球の記録の計算方法や、その値の相場について書いてみたいと思います。
一見複雑な計算式に見えるものもありますが、偏微分や複素数のような高等数学は一切扱いませんのでどうかご安心ください。
投手の記録の計算方法
まずは、投手の記録から見て行きましょう。
防御率
防御率は、その投手がどれくらい失点するのかを表す指標です。
『防御率3.00』の場合、その投手が9イニング投げたら3点失うことを表しています。
防御率を算出する計算式は、次のとおりです。
自責点 / 投球回数 × 9
例を挙げてみましょう。
10回を投げて自責点3の投手がいれば、3/10×9 = 2.70となります。
投球回数に端数がある場合、それも含めます。
148回2/3を投げて自責点30の投手がいれば、30/148.66・・・7×9 = 1.82となります。
ちなみにこれは、2020年最優秀防御率の大野雄大投手の防御率です。
一般的な水準として、先発投手で防御率2点台だとかなり優秀、1点台だと極めて優秀と言えそうです。
逆に、4点台となると、ちょっと安定感を欠くと言われます。
リリーフだと、2点台でありたいところです。ただし、リリーフ投手は『イニング数が少ない』『走者を残して降板したらあとは次の投手次第』あるいは『前の投手が出した走者を生還させてしまっても自分の自責点にならない』という事情から、防御率を鵜呑みにしづらいところがあります。
注意点
・『失点』ではなく『自責点』
・『投球回数』は端数(1/3や2/3)も含める
・有効桁数は小数点以下2桁
勝率
勝率は、その投手が勝つ確率を表しています。
もっと厳密にいえば、その投手が勝ち負けに直接関わった試合数における勝利数の割合と言えます。
つまり、その投手が勝ち投手にも負け投手にもならなかった場合、チームの勝敗に関わらず、その試合はその投手の勝率に影響を及ぼさないということです。
勝率を算出する計算式は、次のとおりです。
勝利数 / (勝利数 + 敗戦数)
例を挙げてみましょう。
18試合に登板して11勝3敗の場合、11/14 = .786となります。
この投手には自分に勝ちも負けもつかなかった試合が4試合あることになりますが、その4試合でチームが勝っても負けても、この投手の勝率には影響ありません。
ちなみにこれは、2020年最高勝率の石川柊太投手の勝率です。
注意点
・自身が勝ち投手(負け投手)にならなかった場合、チームの勝敗はその投手の勝率に反映されない
・有効桁数は小数点以下3桁
奪三振率
奪三振率は、その投手がどれくらい三振を奪えるかを表す指標です。
『奪三振率7.00』の場合、その投手が9イニング投げたら7つ三振を奪うことを表しています。
奪三振率を算出する計算式は、次のとおりです。
奪三振数 / 投球回数 ×9
ピンと来た人もいると思いますが、『防御率』と同じ概念です。
計算式も同じです。
奪三振率が9.00を超える投手は、1イニング1つ以上の三振を奪っていることを意味します。
三振が多ければ多いほど良いとは一概には言えませんが、リリーフ投手は『三振が欲しい場面』に多く遭遇するため、リリーフ投手にとっては奪三振率の高さは安心材料の一つと言えます。
K/BB
K/BBは、奪三振と与四球の関係を表す指標で、制球力を測る目安になっています。
数値の意味としては、1つ四球を与えるまでに三振をいくつ取れるか、を表します。
『防御率』は球場の広さやチームの守備力に左右されるところがあります。
しかし、奪三振と与四球はそうした環境面が介入する余地が少ないため、『K/BB』は投手の能力をほとんどダイレクトに表す指標として信頼されています。
K/BBを算出する計算式は、次のとおりです。
奪三振数 / 与四球
例を挙げてみましょう。
奪三振149、与四球37の投手がいれば、149/37 = 4.03となります。
ちなみにこれは、2020年パ・リーグで最もK/BBが高かった山本由伸投手の成績です。
日本ではあまり使わない指標ですが、メジャーではK/BBはよく使われています。
3.50を超えてくると優秀。
5.00を超えると極めて優秀な投手とされています。
注意点
・有効桁数は小数点以下2桁
WHIP
WHIPは、投手が1イニングあたり何人の走者を出すかの指標になります。
『WHIPが1.0』の場合、その投手は1イニング投げたら安打または四球を1つ許すことになります。
WHIPを算出する計算式は、次のとおりです。
(被安打数 + 与四球数) / 投球回数
例を挙げてみましょう。
148回2/3を投げて、被安打106、与四球23の投手がいれば、129/148.66・・7 = 0.87となります。
ちなみにこれは、2020年セ・リーグで最もWHIPが優秀だった大野雄大投手の成績です。
先発投手であれば、1.2だと優秀、1.0だと極めて優秀とされています。
逆に1.4を超えてくると、走者を出し過ぎという評価が与えられます。
この指標は、特に中継ぎ投手の評価に向いているとされています。
先ほども書きましたが、中継ぎ投手は投球回数が少ないうえ、自分が出した走者を残したまま降板することが多い、あるいは前の投手が出した走者を生還させてしまっても自分の自責点にならないため、『防御率』がアテにならない傾向があります。
また、『勝ち投手、負け投手』がつくのも投入される場面や試合展開に左右されるので運次第なところがあり、勝利数や敗戦数の多寡もアテになりません。
その点、WHIPは試合展開や降板後の失点とは無関係の指標なので、短いイニングしか投げない中継ぎ投手の成績がより正しく反映されていると言えます。
注意点
・有効桁数は小数点以下1桁
打者の記録の計算方法
次に、打撃記録の算出方法を見て行きましょう。
打率
打率は、その打者の打数に対して安打が出る確率を表した指標です。
『打率.300』の場合、その打者が10打数で3安打放つことを表しています。
打率を算出する計算式は、次のとおりです。
安打数 / 打数
例を挙げてみましょう。
402打数132安打の場合、132/402 = .328となります。
これは、2020年首位打者の佐野恵太選手の打率です。
一般的に打率が3割を超えれば優秀な打者と言えます。
.330を超えてくると、タイトル争いの水準になります。
一方で.260より低い場合、チーム打率を下回っている可能性があります。
『得点圏打率』や『カウント別打率』なども、特定の条件下の打席のみを対象としているだけで、計算方法は同じです。
投手の『被打率』も同様です。
注意点
・打席数ではなく打数(四死球、犠打飛は打数に含まれない)
・有効桁数は小数点以下3桁
出塁率
出塁率は、その打者が打席で出塁する確率を表した指標です。(犠打を除く)
『出塁率.400』の場合、その打者が10打席あれば、4回出塁することを表しています。
出塁率を算出する計算式は、次のとおりです。
(安打数+四死球数)/ (打数+四死球数+犠飛数)
または
(安打数+四死球数)/ (打席数―犠打数)
例を挙げてみましょう。
371打数126安打91四死球0犠打5犠飛の場合、(126+91)/(371+91+5) = .465となります。
これは、2020年最高出塁率の近藤健介選手の出塁率です。
分母が少しややこしくなっているのは、犠打を決めた打席は、出塁率の計算式には含めないことになっているためです。
ただし、犠打を狙ったものが凡打になった場合、あるいは犠打を狙ったものが安打や四死球になった場合はそれぞれ凡打や安打などの記録がつくので、ふつうに打席数に含めます。
解釈として、犠打は性質上、自らアウトになりにいくものなので、出塁率の計算方法に組み込んでしまうのは打者に対して過酷と言えるからではないかと思っています。
一方、犠飛はあくまで打ちに行った結果、自分が出塁できなかったということなので、出塁率が下がってしまうのは納得です。
一般的に出塁率が4割を超えれば優秀な打者と言えます。
打率と出塁率の差が.100を超える打者は、かなり四球を選んでいます。
注意点
・犠打は分母に含めない。
・有効桁数は小数点以下3桁
塁打
塁打は、その打者の打力を表す指標です。
塁打を算出する計算式は、次のとおりです。
単打数(安打のうち、長打でないもの) + 二塁打数×2 + 三塁打数×3 + 本塁打数×4
または、
安打数 + 二塁打数 + 三塁打数×2 + 本塁打数×3
塁打は長打率を算出するための指標みたいなところがあるので、ふつうこれ単体で扱うことはないです。
長打率
長打率は、その打者の1打席あたりの塁打数の平均値を表す数値です。
打率を残せて長打力もある打者はこの数字が伸びます。
逆に、打率は高いけど長打力がない打者、一発はあるけど確率が低い選手はそこまで数字が増えません。
長打率を算出する計算式は、次のとおりです。
塁打数 / 打数
例を挙げてみましょう。
424打数130安打(うち二塁打30本、三塁打2本、本塁打28本)の場合、(70+60+6+112)/(371+91+5) = .585となります。
これは、2020年にセ・リーグ最高の村上宗隆選手の長打率です。
長打率が5割を超えてくると、相手にけっこうな脅威を与えられます。
OPS
OPSは出塁率と長打率を合計した数値で、打撃面での貢献度を測る指標です。
得点との相関性が高いとされていて、セイバーメトリクスで非常に評価されている数値です。
OPSを算出する計算式は、次のとおりです。
出塁率 + 長打率
OPSは.800を超えると優秀とされています。
逆に.700を下回ってくると、打撃での貢献度は低いとされてしまいます。
王貞治さんの通算OPSは1を超えて1.080だそうです。
規格外で、驚異的ですね。
注意点
・有効桁数は小数点以下3桁
守備、走塁の記録の計算方法
守備や走塁にも、割合で求められる指標があります。
守備率
守備機会のうち、失策をしなかった回数を表す指標です。
『守備率.995』の場合、1000回守備機会があれば995回アウトに関わる(失策5回)ことを意味しています。
守備率を算出する計算式は、次のとおりです。
(補殺数 + 刺殺数) / 守備機会(=補殺数 + 刺殺数 + 失策数)
例を挙げてみましょう。
刺殺189、補殺336、失策9の場合、(189+336)/(189+336+9) = .983となります。
これは、2020年パ・リーグのショートでゴールデングラブを獲得した源田壮亮選手の守備率です。
守備率は、必ずしも守備の上手さを表しているわけではないという指摘もあります。
たとえば、打球に追いつけなかったものや、打球には触れたけどアウトにできなかった(記録は安打だった)ものは反映されていないなどの理由からです。
注意点
・有効桁数は小数点以下3桁
レンジファクター
レンジファクターは、野手がどれだけのアウトに関与できたかを表す指標です。
『レンジファクター5.00』の場合、その野手が9イニング守ったら、補殺と刺殺の合計が5つということを表しています。
レンジファクターを算出する計算式は、次のとおりです。
(補殺数 + 刺殺数) / 守備イニング数 × 9
失策数は考慮していません。
考え方は、投手の防御率に似ています。
ポジションによって、数字の相場は大きく異なります。
刺殺の多い一塁手では、10.00を超えてきます。
内野の花形と言われるショートでは、5.00を超えると極めて優秀と言えます。
メジャーでは、このレンジファクターをさらに進化された指標として『ゾーンレーティング』があります。
本来処理できたはずの『守備範囲内の打球』を本当に捌けたかどうか、ビデオ解析などで検討して数値を出すようです。一般的な計算式はありません。
注意点
・有効桁数は小数点以下2桁
盗塁阻止率
盗塁阻止率は、相手の盗塁企画に対して、どれだけ阻止できたかを表す捕手の指標です。
盗塁阻止率を算出する計算式は、次のとおりです。
盗塁刺 / 企画数
相手が重盗を図った場合、ワンプレーなので企画数は『1』としか記録されません。
一度に2人の走者を刺すのは不可能ですからね。
この時、どちらかの走者を刺せば盗塁刺が記録されます。その場合はもう一人の走者は盗塁になりませんし。
盗塁阻止率は、4割あれば優秀、5割を超えれば極めて優秀とされています。
注意点
・有効桁数は小数点以下3桁
盗塁成功率
盗塁成功率は、企画した盗塁数のうち、いくつ成功させたかという指標です。
盗塁成功率を算出する計算式は、次のとおりです。
盗塁数 / 企画数
盗塁は『成功数より成功率』と最近言われるようになりました。
盗塁という戦術が、ハイリスクローリターンであると統計上わかってきたからです。
かつては『失敗を恐れずに走れ』だったのが、現在では『失敗を恐れろ』といった感じでしょうか。
もっとも、たとえアウトになっても、次回以降相手に『走ってくるかも』と警戒させることができるので、そうしたプレッシャー効果はセイバーメトリクスでも拾えないメリットであるとは思いますが。
盗塁成功率は.800を超えれば優秀と言われています。
.900を超えれば極めて優秀です。
逆に.750を下回る場合、損失の方が大きいと言われています。
注意点
・有効桁数は小数点以下3桁
チームの記録の計算方法
最後に、チーム記録の計算方法を見てみましょう。
勝率
勝率は、引き分けを除く試合数のうち、勝ち試合の割合を表します。
勝率を算出する計算式は、次のとおりです。
勝利数 / (勝利数 + 敗戦数)
または、
勝利数 / (試合数 ― 引き分け数)
例を挙げてみましょう。
120試合を消化して67勝45敗8分の場合、67/112 = .598となります。
これは、2020年に優勝した読売ジャイアンツの戦績です。
勝率は他チームとの兼ね合いなので一概には言えませんが、6割を超えていれば、他チームをかなり引き離しているはずです。
2020年も、勝率ほぼ6割の読売は、2位阪神に7.5差をつけました。143試合あれば、もう少しゲーム差は拡がっていたかもしれません。
優勝争いがもつれた場合、優勝ラインは5割台後半くらいになります。
ちなみに、引き分けに関しては極端な例があります。
143試合を終了して、142勝1敗の場合、勝率は.993となります。
一方、143試合を終了して1勝0敗142分の場合、勝率は1.000となります。
シーズン1勝しかしなかったチームが、1試合しか負けなかったチームを勝率で上回り、優勝します。
貯金の差は140。ゲーム差はー77になります。
今のは極端な例ですが、2021年は9回打ち切りルールにより引き分けが多発するため、貯金(借金)数の順番と順位が一致しない可能性も高くなりそうです。
ゲーム差
ゲーム差は、球団間の貯金(借金)の差を表します。
まず、貯金(借金)数を算出する計算式は、次のとおりです。
勝利数 ― 敗戦数
これが正の値なら貯金があり、負の値(マイナス)なら借金があるということです。
次に、ゲーム差を算出する計算式は次のとおりです。
(A球団の貯金(借金)数 ― B級団の貯金(借金)数) / 2
例を挙げてみましょう。
A球団は114試合を消化して56勝41敗17分、貯金は56―41 = 15となります。
B球団は117試合を消化して55勝47敗15分、貯金は55―47 = 8となります。
A球団とB球団のゲーム差は(15―8)/2 = 3.5となります。
ちなみにこれは、この記事を書いている2021年9月20日終了時の千葉ロッテマリーンズとオリックスバファローズの戦績です。
まとめ
今回は、数学的な話になりました。
でも、使っている演算式はすべて四則演算なので、小学生でも興味があれば簡単に算出できます。
出塁率なんかは関わる数字が多くてややこしいので暗算はしにくいですが、パソコンのエクセルに演算式でも組んでおけば、自宅で瞬時に計算もできます。
割合によって算出される指標は、『本塁打数』や『勝利数』などの積み重ねて行く数字と違い、意外な変化を見せることがあります。
たとえば分母が小さいと少しの変化で数字が大きく動くとか、ゲーム差では上回っているのに勝率で逆転されるとか、しばしば数字のイタズラに左右されることがあります。
野球の醍醐味はもちろんダイナミックなプレーであるとか、ゲームの展開といった点が大きいです。
それとは別に、単純に数字として野球の記録で遊んでみるのも、また野球の楽しみ方の一つと言えます。
計算の理屈を理解して、自分で色々計算できるようになれば、その味わいもずいぶん深まって、より楽しめるようになると思います。
以上、『打率の出し方は? OPSってなに? 野球の記録の計算方法まとめ』でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。