予告先発のメリット・デメリットは? 応援団の立場から一言言いたい

おはようございます、元応援団員のハルカです。


現在、セ・パ両リーグとも、予告先発制が採用されています。

パ・リーグは1994年から、セ・リーグは2012年からそれぞれ始まりました。

セの採用に合わせて、交流戦も2012年から予告先発になっています。

『観客動員減少を受けファンサービスの一環として』というのがこの制度の導入理由だったと思います。


予告先発の届け出の締め切り時間は、前日に試合があるかどうかで異なります。

前日に試合がある日は、その試合開始1時間前までです。

前日に試合がない日は、前日15時までです。


アクシデントなどにより先発投手を急遽変更する場合もあり得ます。

そのときは、審判と相手チームの監督の了承が必要となります。

これがメンバー交換後の場合、先発を回避した投手は3日間出場停止となります。


日本シリーズでは、両チームの監督が合意した場合は予告先発にしていて、これまでも何度かそういうシリーズがありました。

この予告先発制度ですが、導入時から賛成意見と反対意見がありました。


では、この制度にはどんなメリットとデメリットがあるでしょうか。

チームの視点、ファンの視点、それぞれから見ていきましょう。


チームにとってのメリット

まずはチームにとってのメリットを見てみましょう。


左右の読み違えがなくなり、偵察メンバーを使う必要がない

予告先発がなかった時代は、『先発投手の探り合い』という駆け引きがありました。

ローテの中心になるような投手はともかく、誰が先発するのかを隠す、あるいはそれを読み当てることに現場は苦心し、ファンは楽しんでいました。

相手投手によって相性だったり左右だったりでスタメン野手の顔ぶれが変わることがあります。

しばしば、相手の先発投手を読み違えるシーンもありました。

どうしても先発投手がわからないときは、『偵察メンバー』を起用することもありました。

その日登板させない投手などを仮のスタメンとして発表しておいて、相手投手が発表されたあとで、それに適した野手に変更するというやり方です。

選手を1人無駄に使ってしまうマイナス面はあるものの、読み違えるリスクを考慮したら、有効なやり方です。

試合前のスタメン発表には、このような楽しみがありました。


ちなみに、本題とは関係ないですが、偵察メンバーの選手も記録に残ります。

打撃成績としての「試合」の数にカウントされます。

もう一つ本題とは関係ないですが、偵察メンバーを指名打者で使うことは事実上できません。

なぜなら、指名打者として先発オーダーに記載された選手は、1打席を完了するか、相手の先発投手が降板しなければ他の選手との交代ができないというルールがあるからです。


話を戻します。

予告先発制度になったことで、先発投手の探り合い、隠し合いはなくなりました。

当然、先発を読み違えることもないし、偵察メンバーを使う必要もありません。

余計な情報戦をしなくてよいのは、現場にとって一つのメリットと言えそうです。


ただし、オープナーという戦術により裏をかかれることもあります。

相手の先発が右腕だからといって左打者ばかりを並べたら、2回からいきなり先発タイプの左投手がマウンドに上がるということもありえます。


1日かけて相手投手の対策ができる

予想もしていない若手とか新外国人選手などが突然先発起用されることがあります。

予告先発がないときは、試合開始の直前にそれを知ることになるので、スコアラーはデータ集めで大慌てです。

初対戦なんかだと、余計に苦労します。

しかし、前日の夕方には相手の名前がわかるので、初対戦だとしてもある程度のデータを収集することが可能です。各打者も、それに合わせて事前に準備ができます。


対策が有効なのは、何も奇策のときだけではありません。

ローテーション通りの相手が投げるときだって、『おそらくこの投手』と思うのと『確定』の状態で待つのは違います。

個々の対策、あるいはチームとしての対策を十分に練ることができます。



先発隠しで、先発じゃない投手がダミーの調整をしなくて済む

予告先発以前は、相手に先発投手を探らせないために、候補者たちがダミーで調整することがありました。

予告先発になって隠す必要がなくなったことで、ダミー調整も不要になりました。

中には、ダミー調整でリズムを崩す投手もいたそうなので、投手への負担が減ったと言えそうです。

これも予告先発導入のメリットの一つです。


予告先発が集客に繋がる

この制度の導入理由がこれでした。

先発投手が『絶対的エース』であったり『人気選手』であったりすれば、それを見たいと思うファンも大勢います。

そうした選手が登板することを前日に知らせることで、集客率のアップに繋がります。

ファンにとってもメリットがあるけど、観客が多いことは選手にとってはモチベーションになるし、チームにとっては収益としてプラスになります。



チームにとってのデメリット

次は、デメリットを挙げてみます。


先発隠しができない

先ほどのメリットと表裏一体ですが、相手の先発投手がわかる反面、こちらの先発投手も相手にわかってしまいます。

お互い誰が先発するか、その組み合わせによってメリットとデメリットが入れ替わります。

隠す必要もないローテの中心投手が投げる場合と、なるべく隠しておきたい投手を投げさせる場合とで、事情が変わってきます。

戦術として、左右の読み違いを誘うことができなくなりました。


奇策もやりづらくなります。

リリーバーを先発させるとか、若手や新外国人投手を抜擢するなど、ローテーションどおりではない投手を奇策として先発させることもあります。

試合前にいきなりその名前を知れば、相手も少しは慌てたかもしれません。

今では1日かけてじっくり対策されてしまいます。


個人的に印象が深いのが、2004年の開幕戦です。

中日ドラゴンズの開幕投手が川崎憲次郎投手だったことに、誰もが驚きました。

川上憲伸、山本昌、ドミンゴ投手という複数の候補者が挙がっていた中で、対戦相手もまさか川崎投手の対策はしていなかったと思われます。その意味で、奇襲が成功した例でもありました。

現行制度で、こういった奇襲はできません。

まあ、川崎投手を開幕投手にしたことは、単なる奇襲というより、別の意図もあったと言われています。

新しく就任した落合監督がいきなり奇抜な采配をしたことで、相手チームに不気味さを植え付ける効果があったということがよく言われます。実際、落合監督が指揮を執った8年間の中で、ゲームの中で奇抜な采配をしたのはあのときくらいでした。(シーズン後に全員登録抹消したのも見事でしたが)

また、あの頃の中日ドラゴンズは親会社でもあるマスコミにチーム情報がダダ洩れだったそうで、『川崎投手が開幕投手』というビッグニュースを誰に知らせたら漏れるのか、その見極めに使われたとも言われています。


いずれにせよ、こうした先発隠しによる大胆な采配であるとか、高度な読み合いや駆け引きがなくなったことは、デメリットでもあると言えます。


予告先発を見て、観戦を取りやめるファンがいるかもしれない

これも、『予告先発が集客に繋がる』というメリットと表裏一体です。

『先発投手によって客が入る場合がある』というなら、当然その逆もあるわけで、特に『相手が絶対的エースなのに、こちらは不安定な投手』であれば、ファン心理として『今日はやめとくか』という気持ちもありえます。


このように、先発投手によって集客に及ぼす影響は、プラスにもマイナスにもなりえるようです。



ファンにとってのメリット

次はファンに目線でメリットを見ていきましょう。

試合への関心が高まる

話題の投手が投げることが前日からわかっていたら、試合への注目度が高まります。

『アマチュア界で有名だった選手がプロ初先発』

『無敗で連勝を続ける投手が記録をかけて登板する』

『天王山で両チームがエースを立ててきた』

これはもう試合前からワクワクが止まりません。

こうしたシチュエーションであれば、当日の試合開始前に発表されるより、前の日からわかっていた方が期待も注目も集まります。

ファンも前夜からあれこれと予想して楽しむこともできます。

観戦するかどうかの判断基準の一つになる

この記事の中ですでに何度か書いたとおりです。

エースが登板する日であれば勝率は高そうですし、自分が注目している投手が投げるならこの目で見てみたいなという気持ちも生まれます。

逆に、失礼な言い方かもしれませんが、先発投手を見たうえで観戦を取りやめることもできます。


もちろん、先発投手のもとに試合展開を予想してもその通りになるとは限りません。

ただ、観戦するかどうかの判断基準の一つにすることはできます。


もっとも、先発投手が観客動員数に影響を与えているかどうかは、疑問を残すところではあります。

応援団としては、先発投手の顔ぶれによって行くか行かないか決めるということはありません。


多くのファンにとっても、『チケットが取れるかどうか』『その日の都合がつくかどうか』が観戦するかどうかの優先事項であって、前日の夕方にわかる先発投手を見て観戦するかどうかが左右される人はだいぶ少ないんじゃないかなという気はします。



ファンにとってのデメリット

予告先発は、ファンにとってデメリットもあります。

先発投手を予想する楽しみがなくなる

予告先発になる前は、『先発予想』が試合前の楽しみの一つでした。

誰もが予想できる日もあれば、なかなか予想がつかない日もあります。

新聞各紙によって名前が違う日もけっこうあります。

あるいは、『今日は絶対〇〇が投げる』と信じて疑わないような日に、いきなり別の投手が告げられることもあります。

アクシデントなのか、作戦なのか、ファンとしてはハラハラする瞬間です。


自分の予想が当たったかどうか。

あるいは、相手ベンチの裏をかけたかどうか。

予告先発によって、こうした楽しみはなくなってしまいました。


試合への関心が薄まる

『試合への関心が高まる』というメリットの裏の側面です。

注目度の低い投手が投げるとき、その時点で世間がその試合に関心を失ってしまうリスクがあります。



今後の展望

一長一短ある予告先発ですが、

現場としてもファンとしても、おおむねこの制度には好意的なようです。

反対意見はマイナー意見のように扱われていますし、今後もこの制度は続いていくことが予想されます。


でも、投手を予告するのはこのままでいいとして、

個人的にはもう一つそれに加えて欲しいことがあります。

それは、『野手の予告先発』です。

今後は野手も予告スタメンにしたらどうでしょうか、と僕は思っています。


『先発投手を予告することによって集客率を高める』のが目的というなら、

ファンが見たいのは先発投手だけではありません。

『スタメンが確約されていない準レギュラー』とか、『休養しながら出場するベテラン選手』とか『一軍に昇格されたばかりの期待の若手』など、日によってスタメンの顔ぶれは違います。

気になる野手がスタメンになっていたら『あ、明日は○○選手がスタメンで出るんだ。それなら観に行こうかな』ということも起こり得ます。


それに、野手も予告にしてしまえば、上で挙げた『予告先発によるデメリット』の一部を解消できます。


現場にとっては、『先発投手の探り合い』『偵察メンバーの起用』など、高度な駆け引きや戦術も復活して見所が増えます。


応援団としても、スタメンが事前にわかっていたらありがたいです。

不安な応援歌があればこっそり練習しておけるし、

1日前に知っておけばそのぶん余裕をもって準備できますからね。


何だか、いいこと尽くしのように思えます。


東日本大震災直後の開幕前、監督がテレビ出演してスタメンを発表したことがあります。

当時はルールに基づいた行為ではなく、あくまでファンを盛り上げるためのスタメン発表でした。それと同じことを毎試合して欲しいなと思うわけです。


これならファンにとっての予告先発のメリットをそのまま継承しつつ、デメリットも解消できます。

ファンサービスが目的というなら、そこまでやってもらいたいですね。



まとめ

予告先発のメリットとデメリットを、チーム目線とファン目線それぞれで見ていきました。

すっかり予告先発は定着していますが、たまにh先発投手を予想する楽しみをまた味わいたくなるときもあります。

一長一短あるのでどちらがいいと言い切れないところはありますが、予告先発を投手だけでなく野手にまで拡大することで、現行制度のデメリットの一部は解消できそうです。

この制度を継続するにしても、そうした改良をぜひしてもらいたいものです。


以上、『予告先発のメリット・デメリットは? 応援団の立場から一言言いたい』でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。