プロ野球の応援団は許可制? 裏事情の一部を公開
おはようございます、元応援団員のハルカです。
「お前ら、なに勝手に球場でラッパ吹いたり太鼓叩いたり、えらそーにファンを仕切っているんだよ。誰の許可を得てやってるんだよ」
かつて、僕は一般ファンからこのように言葉をかけてもらったことがあります。
勝手に・・・誰の許可・・・・
その人は見ず知らずの一般客だったので、もちろんその人から許しは得ていません。
幸い、得る必要もなさそうです。
その人はともかくとして、応援団をやるには、誰かの許しを得る必要があるのでしょうか。
応援団は完全許可制
まずは、応援団は許可が要るのかどうかから説明しましょう。
結論から言うと、許可は要ります。
応援団をやるには許可が要る
応援団は、許しを得ないと勝手にやることはできません。
したがって、一般ファンの皆さんが「よし今日から応援団をやろう」といって勝手に球場に楽器を持ち込んだり旗を振ったり、みんなの前に立ってリードを取ることはできません。
逆に言えば、球場にいる応援団員たちは、許可を受けた人たちということです。
では、いったい誰の許しを得たのかというと、日本プロ野球機構です。
日本プロ野球機構は、12球団が行う野球という興行を取り仕切っている団体です。
プロ野球の観戦には規則がある
あまり意識していないかもしれませんが、プロ野球の観戦には、規則が設けられています。
それも、かなり細かい部分まで定められた、しっかりとした規則です。
僕たちがプロ野球を観戦しようと思ったら、この規則の中で観戦しなければいけないわけです。
この規則は、ホームページでも確認できるし、チケットの裏面などにも載っていることもあります。
観客の前でリードを取って仕切る、トランペットを吹く、太鼓を叩くなどの応援行為は、日本プロ野球機構が定める規程の中でいうところの『観客を組織化し又は統率して行われる集団による応援』(第1条第1項)に該当します。
こうした行為を行うためには、所定の申請を行い、日本プロ野球機構の許可を得る必要があります。
この許可制は2006年に始まって、現在に至っています。
応援団の許可制はどのように始まった?
次に、応援団が許可制になった経緯をお伝えします。
許可制度ができた経緯
かつては一部の応援団がやりたい放題の横暴をはたらいてはトラブルを起こしていました。
チケットの転売、グッズの不正販売、応援歌の著作権問題などが横行し、座席を不当に占拠したり応援団同士や一般ファンと小競り合いも日常的でした。
また、一部の応援団には反社会勢力の人たちがいました。
許可制になったのは、そうした問題ある応援団を排除するためです。
試合観戦契約約款の中に、特別応援許可規程が設けられました。
暴力団対策法の施行以降、各球団が警察と連携を図って徹底した排除を実施しました。
こうして、2006年シーズン以降は、球団を通じて日本野球機構に登録を申請し、許可を受けた私設応援団のみが活動できるようになりました。
実際の規程の条文
実際の規程を載せてみます。
本規程は、観客を組織化し又は統率して行われる集団による応援(以下、「応援団方式の応援」という)の許可の基準と手続を定めるものである。(1条1項)
応援団方式の応援を行おうとする団体は、当球団に対し、予め、当球団所定の許可申請書を提出し、当球団の許可を得なければならない。(2条1項)
前項の許可申請を行う団体は、当球団所定の許可申請書に以下の事項を記載し、代表者が署名押印をしたうえで、これを当球団に提出しなければならない。
(1)団体名
日本プロ野球機構公式ホームページから引用
(2)代表者名
(3)団体の連絡先
(4)構成員(経常的に応援団方式の応援に関わる者を含む。以下同じ)の数
(5)構成員の氏名、顔写真、住所、連絡先を記載した名簿
(6)応援形態
(7)その他NPBが求める事項
(2条2項)
不許可になった事例
2008年には、この規程に抵触したということで、一部の応援団が排除処分と不許可処分になりました。
この応援団は提訴して争ったんですが、敗訴しました。
最高裁でも原告の上告は棄却され、判決が確定しました。
理由としては、応援団の中に暴力団関係者がいたことが挙げられたそうです。
結果、その球団は応援団がなくなって、スタンドはシーンと静まり返っていました。
応援団のいないスタンドでは、外野からのまとまった応援が生まれません。
これには、一般ファンからも選手からも寂しいと声が上がりました。
けっきょく、その球団は球団が応援団員を公募して、球団公認の応援団ということで許可を取り付け、現在も活動しています。
ちなみに、ほかの球団でも、応援団を球団公募にしているチームはあります。
申請内容、審査内容は?
では、申請や審査の内容について説明します。
申請の内容と方法
申請にあたっては、代表者名をはじめ、メンバー全員の氏名、顔写真、住所、連絡先の提出も求められます。
そのデータを基に、メンバー一人ひとりについて審査が行われます。
僕は具体的な審査基準を知りませんが、この審査を行う背景を考えてみると、「反社会勢力との関与」とか「球場でのトラブル歴の有無」とか、そういったことを調べているのかなという気がしています。
基準を満たしていない団体または個人は、許可が得られないこともあります。
許可を受けたら個人の写真が入ったIDカーが配られます。
球場内では常にこのIDカードを携帯することが義務付けられています。
一度許可されても、その後不適格となる事実が起こったり判明したりすれば、そこで許可が取り消されることもあります。
団長が日本プロ野球機構に呼ばれるたび、僕たち団員は『まさか』と怯えながら過ごしていたものです。
許可制が応援団員に及ぼす影響
この許可制度が、応援団員にどのような影響を及ぼすでしょう。
まず確実に言えることは、すべての応援団員にとって、この許可制度が頭から離れることはひと時もありません。
許可制度は常に応援団員の頭の中にある
応援団は常にこの許可制のことを意識して活動しています。
なにかトラブルがあったら、許可が取り消されかねないからです。
そのため、常に身を潔白にしておく必要があります。
僕は反社会勢力とのつながりもないし、宗教や政治への傾倒もなく、逮捕歴なし、借金なしで、公私ともトラブルもありません。
なので、自分では引っかかる可能性はゼロだと思っています。
でも、約款や規程だけではわかりませんが、もしかしたこの規程に非公開な内規とかがあるかもしれないし、どんな言動が規程に抵触するかわかりません。
それに、第三者がありもしない僕のスキャンダルをでっちあげて、球団や日本プロ野球機構に垂れ込むというような悪質な嫌がらせがないとも限りません。
冤罪で不許可になるほど悲しいことはないです。
そして、もし自分が規約に抵触する行為をした場合、自分一人だけじゃなくて同じ応援団のメンバーや、同じ球団に所属する別の応援団にも波及しかねません。
そうなったら、自分一人の責任ではなくなります。
なので応援団員は、球場ではもちろん、私生活でも自分の言動や所作には気を配っています。
トラブル対策
有効なトラブル対策の一つとして、『球場以外では目立つことをしない』があります。
僕は職場では「野球に興味がない人」で通しています。
その方が余計なトラブルを生まないからです。
「オレ応援団やっています」その不用意なひとことが、どんなアクシデントに発展するかわかったものではありません。
アメリカのマフィアは、日本のヤクザと違って自分がマフィアの構成員だということを徹底して隠しているそうです。
表向きの仕事をもち、目立たない格好をして、一般市民と見分けがつかないそうです。
僕たち応援団員はマフィアのような犯罪組織ではないですが、身の処し方としてはそれに似たところがあります。表向きは普通の社会人として振る舞い、日常生活では応援団員であることを表に出しません。
外野スタンドでは誰よりも存在感があるけど、球場を出るときには応援団の法被や服から私服に着替えて、一般客に紛れて帰ります。
一般ファンの中には、野球観戦後に好きなチームのユニフォームやグッズを身につけたまま駅や居酒屋にいく人を見かけますが、応援団員ではあり得ない行為です。
さっきまで野球場にいたことさえわからないような格好で、球場からそっと離れます。
他の面で言うと、チケット類の譲渡や転売はいっさい禁止されています。
野球だけじゃなく、音楽や劇なども含むすべての興行においてです。
ダフ屋行為をしているとの誤解を招くからです。
そんな些細なことでも、なにが抵触するかわからないからです。
常に監視の目に怯えながら、規程の遵守に徹する毎日です。
いまはちょっとでも怪しい行動をしていると、YouTubeとかにすぐ上げられるので注意が必要です。
何気ない言動の一つひとつが証拠に残るし、日本プロ野球機構はこまめにチェックしているから危険極まりないです。
まとめ
応援団は完全許可制です。
日本プロ野球機構が定める特別応援許可規程に則って、応援活動をしています。
規程に抵触すれば、最悪の場合は応援団の世界から一発追放です。
二度と復帰できないケースも多くありました。
応援団員を殺すのに刃物は要りません。不許可処分になるだけの要素をでっち上げられたら応援団人生はそれで終了です。
そうならないために、皆んな常に身を潔白にし、特別応援許可規程の遵守に努めて日々を過ごしています。
以上、『プロ野球の応援団は許可制? 裏事情の一部を公開』でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。