ドラフト会議直前! ドラフト制度の変遷と現状をまとめてみた

2022年1月23日

おはようございます、元応援団員のハルカです。


プロ野球では、毎年秋に『プロ野球ドラフト会議』が行われています。

2021年のドラフト会議は10月11日に行われます。

この『ドラフト会議』は、各球団が『この選手が欲しい』とアマチュア選手を順に指名し、それぞれ入団交渉権を得るものです。

現在、アマチュア選手がプロ野球の球団に新規入団する方法は、これしかありません。


この制度は、『球団』『アマチュア選手』『球界全体』それぞれの都合を考慮しつつ、何度もやり方を変えながら運用されてきました。

そのため、制度が複雑化したり、球団間で公平性に欠けたり、アマチュア選手が意中の球団に入れないことが問題になったりと、様々な問題を生みながらやってきました。


現在のやり方は、『アマチュア選手が希望球団を選べない』という課題を残しつつ、それ以外はおおむね問題なく運用されているように思えます。


2021年のドラフト会議を目前に控えたいま、過去のドラフトの運用方法を振り返り、その変遷をたどってみたいと思います。




現行のドラフト制度

まずは、現行のドラフト制度のやり方を見てみます。

このやり方は2008年から続いています。


1位指名は入札抽選

1位指名は入札で行われます。

12球団が、それぞれ獲得したい選手1名を指名します。


一斉に12球団の1位指名選手が発表されたとき、どことも重複していない『単独指名』だった場合、球団はその選手との交渉権を獲得します。


複数球団の希望が一人の選手に集中していた場合、希望する球団がくじを引きます。

この抽選で当たりくじを引き当てた球団が、その選手との交渉権を獲得します。


くじに外れた球団は、代わりに別の選手を1位指名します。

これが『外れ1位』です。

外れ1位の選手が再度複数球団で重複した場合、またそこで抽選が行われます。

そこでも当たりくじを外した球団は、『外れ外れ1位』の選手を選択します。

12球団すべての1位指名選手が決まるまでそれを繰り返します。


2位以下は完全ウェーバー制

2位以下の場合は、ウェーバー制です。

早い者勝ちです。

ドラフト会議1週間前時点での『ペナントレースの順位の逆』の順番に、選手を指名します。

ドラフト2位をすべての球団が終えると、次はドラフト3位の選手です。

今度は2位のときと逆の順番(ペナントレースの順位の順番)に指名されます。

4位以下も同様のやり方で続いて行きます。


こういう仕組みなので、基本的には有力な選手からどんどん先に指名されていきます。

ただし、ポジションやタイプの兼ね合いとか、球団間の駆け引きなんかの都合により、本来は早い順位で指名されてもおかしくない選手が意外に低い順位まで残っていることもあります。


獲得したい選手がいなくなった球団は、そこで終了となります。

あとは残った球団でドラフト会議を続けていきます。


プロ志望届

ドラフト会議では、各球団は誰でも指名できるわけではありません。

高校生、大学生で指名できるのは『プロ志望届を所属の連盟に提出した選手』のみが対象です。

プロ野球への入団を希望する生徒や学生は、あらかじめプロ志望届を提出しておく必要があるということです。


この制度は、プロ側が『進学や就職の意志がある高校生』を強行指名するのを阻止するなどの効果があります。


また、『プロ志望届を出したのにどこからも指名されなかった選手』が独立リーグに入団した場合、その選手は翌年はまたドラフト候補になることができます。

従前は『大学に進学して4年後のドラフトを目指す』『社会人に進んで3年後のドラフトを目指す』『1年浪人する』という選択肢しかなかったことに比べると、再度プロを目指しやすい環境が得やすいと言えます。


入団拒否

意中の球団以外から指名された場合、選手側に拒否する権利があります。


これに対して、プロ志望届を提出したドラフト対象選手がドラフト会議の指名を拒否して外国球団と契約した場合、帰国後数年間はドラフト指名できないというペナルティがありました。


ここ10年くらいの例でいうと、入団拒否した例として菅野智之投手が挙げられます。

希望でない球団に指名された菅野投手は、入団拒否して一浪しました。


大谷翔平投手はメジャー志向が強く、日本のプロ野球には入団しないと公言していました。

それでも1位指名され、さらに熱心に説得され、結局態度をひるがえして入団しました。

この選択は良かったのではないかと思っています。


もっと前に遡れば、希望していない球団から指名された例はたくさんあります。

清原和博選手、松坂大輔選手らのようにそのまま入団して活躍した選手もいれば、福留孝介選手や内海哲也投手らのようにいったんアマチュア球界に進む選手もいます。

たまに菅野投手や元木大介選手のように1年浪人する選手もいます。


ただし、入団拒否して数年後のドラフトに懸ける場合、そのときに意中の球団から指名される保証はないというリスクはあります。



過去のドラフト制度

では、過去のドラフト制度のやり方を見てみましょう。


以前は逆指名制度がありました。

一部の有力なアマチュア選手は、希望する球団に入団することができるという制度です。

逆指名制度は、公平性を欠くのではないかとしばしば指摘されていました。

逆指名制度は1999年に終わりましたが、その後も『自由獲得枠』や『希望枠』と名称や運用方法を変えながら、ほとんどしばらく継承されていました。


ドラフト外入団

かつては、ドラフト会議に指名されることなく入団する場合がありました。

『ドラフト外入団』と呼ばれています。

この制度は1991年に廃止されています。


逆指名制度

逆指名制度は、アマチュア選手が意中の球団のみを志望(指名)できる制度です。

この制度は1993年にスタートしました。

選手の方が希望の球団を指名し、その球団がこの選手を指名することになれば、他球団は手を出すことができません。

ドラフト1位、2位でこの方法を使うことができるので、1球団が最大2選手を逆指名で獲得できます。

高校生は対象外です。

2001年からは『自由獲得枠』という別の制度に替わりましたが、おおまかな内容はほとんど継承されたままです。


自由獲得枠

2001年から、それまでの『逆指名制度』に代わって『自由獲得枠』が設けられました。

本質は、逆指名制度と大差ありません。

各球団2人まで、高校生以外のアマチュア選手と『相思相愛』であれば、他球団に邪魔されることなく自由に獲得することができます。


ちょっと複雑になったのは、自由獲得枠を2つ使う場合と、1つしか使わない場合と、まったく使わない場合で、それぞれ指名の順番が変わることです。

指名順位の数え方も、それまで『○位』としていたのが『○巡目』という表現に変わりました。

1巡目・・・自由獲得枠を使わない球団のみによる、入札抽選。実質、今までの『1位指名』と同じ。

2巡目・・・自由獲得枠を1つしか使わない球団のみで、ウェーバーによる指名を行う。実質、『2位指名』と同じ

3巡目・・・自由獲得枠を使わない球団のみによるウェーバー指名。実質、『2位』指名と同じ。

4巡目以降・・・全球団によるウェーバー指名(&逆ウェーバーとの繰り返し)。実質、4巡目は3位指名と同じ。


3巡目以降は、従前のドラフト制度の『○位』より、指名順位の数字が一つ大きくなっています。

つまり、3巡目指名なら実質2位、6巡目指名なら実質5位ということになります。

数字が一つずつずれている分、選手にとって『聞こえが少し悪くなった』というデメリットがありました。


希望入団枠

2005年から、それまでの『自由獲得枠』に代わって『希望入団枠』が設けられました。

『自由獲得枠が裏金などの不正行為の温床になっている』との指摘を受け、賛否両論のなかで試行的に始まった制度です。

自由獲得枠とほとんど似ていますが、自由に獲得できる選手が2人から1人に減りました。

希望入団枠を使うかどうか、あらかじめ申請が必要でした。


もっと大きな変化として、この年から『高校生』と『大学生、社会人など』に分けてドラフトを行うことになりました。

『希望入団枠』の行使の有無によって、指名順位に影響がありました。


分離ドラフト

上で書いたように、2005年から『高校生』と『大学生、社会人など』に分けてドラフトを行うことになりました。


まず10月に高校生ドラフトを行い、その後11月に大学生、社会人ドラフトが行われました。


『高校生ドラフト』は、高校生のみが対象です。

1巡目・・・全球団による、入札抽選。事前に申請すれば、1巡目の指名を行わないこともできる。(大学生・社会人ドラフトで有利になる)

2巡目・・・希望入団枠を使わない球団のみによるウェーバー指名。

3巡目以降・・・全球団によるウェーバー指名(&逆ウェーバーとの繰り返し)。


『大学生・社会人ドラフト』は、高校生以外のアマチュア選手が対象です。

1巡目・・・『希望入団枠の行使を申請したにも関わらず誰も獲得できなかった球団』のみによるウェーバー指名。

2巡目・・・高校生ドラフトで1巡目指名を行わなかった球団のみによるウェーバー指名。

3巡目以降・・・全球団によるウェーバー指名(&逆ウェーバーとの繰り返し)。


育成ドラフト

『育成ドラフト』は、育成枠の選手を獲得するドラフトです。

『希望入団枠』や『分離ドラフト』が始まった2005年からスタートしました。

他の制度はやり方が変わったのに対し、『育成ドラフト』はそれ以降も継続されています。


指名人数の上限

ドラフトで指名できる人数には制限があります。

年によって、少しずつ変化しています。


大昔は人数制限がない時代もあったようで、その後は『6名以内』だったり『4名以内』だったり『10名以内』だったり、変化を重ねてきました。


1995年から、『8名以内』になりました。

としつつも、1999年から『全球団の合計人数が96名以内なら、10名までOK』になりました。


2001年以降は『全球団で120名以内』となり、1チームあたりの上限は撤廃されています。


2021年のドラフト会議

2021年のドラフトは、投手が豊作と言われています。

各球団にはそれぞれ事情があるとは言いつつ、基本的に投手はどこも欲しいのが当たり前です。

そう考えると、ほとんどの球団の上位指名は投手中心になりそうです。


一方、投手が豊作と言われている中であえて野手を1位指名する球団があれば、『中心打者を育てたい』という球団の意気込みを感じられます。

近年、阪神タイガースが大山悠輔選手や近本光司選手を指名したときや、オリックスバファローズが吉田正尚選手を指名したときは、球団の決意を見た気がしました。




まとめ

ドラフト制度の変遷や、過去の制度のしくみを見てみました。

『逆指名』のやり方が繰り返し見直されてきたのは、それだけ賛否が多かったからでしょう。


『特定球団に有利すぎる』『不正の温床になる』といった反対派と、有力選手を確実に獲得したい肯定派の溝がなかなか埋まらないのも当然です。

そうこうしている間にいくつかの不正が明るみになり、『不正をただそう』という意見が徐々に強くなってきて、なし崩しに現行制度に移行したような印象を受けます。


『戦力均等化』や『不正をなくす』という意味では、現行制度はほとんど非のない制度に見えます。

一方、『選手に球団選択の自由がないのは違憲ではないか』とか『球団選択の自由がないことが、海外流出の温床にならないか』といった懸念もあります。


まあ、どのような制度にしても不満や不安がゼロになることはなさそうですが、現行制度が10年以上続いていることを考えれば、おおむね受け入れられたやり方なのかなと思います。

個人的には逆指名制度の復活や、それに準ずる制度への移行があっても良さそうだと思います。

戦力均等化に反するという意見もあるでしょうけど、正直、どんな有力アマチュア選手でもプロで活躍するかどうかは未知数です。それに、逆指名されるような魅力的な球団を作るのもまたその球団の努力や工夫によるものです。



さて、今年は各球団がどんな思惑で誰を指名するでしょうか。

1位で重複指名はあるのか、くじ引きで笑うのはどこの球団なのか。

そして、何年も経ったあと、今回のドラフトは成功と言われるのか失敗と言われるのか・・・

10月11日のドラフト会議を楽しみにしています。


以上、『ドラフト制度の変遷をまとめてみた』でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。