リクエスト制度のメリットとデメリットと「応援団員の本音」

おはようございます、元応援団員のハルカです。


2018年から、プロ野球にリクエスト制度ができました。

すべてのプレーが対象になるわけではないですが、

ジャッジに不服がある場合、映像を確認したうえでの再判定が可能になりました。


この制度により、審判のジャッジは『絶対』から『仮判定』になりました。

じっさい、リクエストによって判定が覆るケースも目立ちます。


このリクエスト制度にはメリットもデメリットもあり、いまだ賛否両論があります。

そこで、今回はリクエスト制度の功罪について考えてみたいと思います。



リクエスト制度の概要

まずはリクエスト制度の概要をまとめてみました。


リクエスト制度が導入された背景

昔から、誤審はしばしばありました。

また、誤審とは言えなくても、何となくモヤモヤするような判定もたくさんありました。

際どい判定は、試合の中ではよくあることです。

そして、審判も人間なので、誤った判定をしてしまうこともあります。


ジャッジが疑わしいときはだいたい監督や選手が抗議しますが、基本的に覆ることはありませんでした。

誤審であっても、審判が下した判定は絶対のものでした。

『本当はアウトなのに』『絶対に間に合っていたはず』『もっとよく見て欲しい』

言っても仕方がないこととはいえ、その悔しさはよくわかります。

監督や選手だけでなく、ファンも同じように悔しい思いをたくさんしてきました。


一つの判定が試合を左右することもあるし、選手の成績に大きく影響することもあります。

そこで、こうした誤審をなくし、よりみんながスッキリできるようにしようということで、この制度が生まれました。

リクエスト制度のルール

リクエスト制度のルールは次のとおりです。

・要求できるのは監督のみ
・1試合で2回までリクエスト可能(延長戦ではリセットされて1回まで可能)
・判定が覆った場合、リクエスト回数はカウントされない
・検証によって判定された結果への異議は禁じる。唱えたら退場処分
・映像の検証時間は5分以内とし、確証が得られない場合は最初の判定どおりとする
・ワンプレー中の出来事であっても、その中の2つのジャッジに異議があれば、それぞれのプレーに対してリクエスト回数がカウントされる。

この中で、特に問題になるような部分はなさそうです。

『この制度が是か否か』という観点では色々意見が集まりそうですが、このルールの内容については妥当と言えそうです。


リクエスト対象外のプレー

リクエスト対象外のプレーは次のとおりです。

・ストライク、ボールの判定
・ハーフスイング
・自打球
・走塁妨害
・守備妨害(※コリジョン、併殺崩しは適用可)
・ボーク
・インフィールドフライ
・塁審より前方(本塁寄り)の打球

ここに挙げた項目については、リクエスト制度の対象外です。

これに関するプレーは、今までどおり、一度審判が下した判定に意を唱えることはできません。




リクエスト制度のメリット

では、リクエスト制度によるメリットを見て行きましょう。


より正確な結果判定が得られる

『明らかな誤審が覆る』『際どいプレーがより正確にジャッジできる』というのが、この制度の一番のメリットです。

導入年度は、リクエストしたうちの約1/3程度の判定が覆っているので、所期の効果が得られたようです。

監督、選手、ファンのみんなにとって、より納得いく結果を得られることが多くなっているのでしょう。


審判の負担の軽減

際どいプレーの判定をした審判への誹謗中傷が減ることが期待されます。

明らかな誤審はもちろん、どちらとも言えない判定をした審判に対しても、SNSなどで批判が行われることが当たり前のようになっています。

リプレー検証までして最終判断をくだしたのであれば、その審判に対する批判の抑止効果になり、審判の負担を軽減できます。


審判のレベルの向上

審判としては、自分のジャッジがリクエストによって覆ることは避けたいことです。

それを減らすためには、一層のレベル向上に努める方向に向かうはずです。

それが、審判のレベルの向上につながります。



リクエスト制度のデメリット

次に、リクエスト制度によるデメリットを見て行きましょう。


審判の権威の失墜

冒頭で述べましたが、この制度によって、審判のジャッジは『絶対』から『仮判定』になりました。

『審判の仮判定はもういいから、映像を観ようじゃないか』なんて、審判を軽視する風潮が起こりかねません。

審判の威厳を損ねることは、スポーツとしては望ましくない傾向だと思います。


試合が中断する

1回あたり5分以内とはいえ、両チームが2回ずつ使ったらそれなりの時間がかかります。

何より、プレーが中断することで流れが変わったり、せっかくの緊張感が薄れたりと弊害が起こります。

より正確なジャッジを求める反面で、試合のスピード感が失われます。

せっかく良い雰囲気やテンポがあった試合が、シラけた雰囲気にもなってしまいます。


映像設備が不十分

リプレー検証をするためには、検証するに十分な精度の映像が必要です。

そのためには、カメラなどの機材が不可欠です。

メジャーでは相当規模な予算が組まれたそうですが、日本ではその設備がまだまだ乏しいようです。

コストがかかることなので早急にはいかないのでしょうが、十分な映像が確認できないようだと、この制度そのものが根底から崩れてしまいます。


『覆る前』のジャッジがプレー映像として残る

これは主にメディア関係者が受けるデメリットです。

ニュースなどで映像を使うとき、『仮判定』の映像だけを流すと審判のジャッジが事実と違うことになってしまうので、『その後リクエストにより判定が覆った』ことまで説明する必要が生まれます。

そのために尺を使うし、映像全体の編集の流れに影響する、というデメリットが生じます。


YouTuberが編集した『ファインプレー特集』『安打集』などもそうです。

テンポよく次々に映像を流したいのに、いちいちリクエスト後に審判が再度ジャッジするシーンを入れても、流れを損なうだけです。

かといって、『仮判定』の映像のみを使うと、『ん?これセーフなのになんで好守備集の中に入っているの?』となってしまいます。




リクエスト制度の課題

リクエスト制度には課題もあります。

上で挙げたデメリットの部分がそのまま課題と言ってもいいかもしれません。


その他には、こんな声も上がっているようです


リクエスト適用範囲の拡大

リクエスト適用外となっている項目の中で、『これはリクエストの対象にしても良いのでは』と思える項目もあります。

一番気になるのは「塁審より前方の打球」

前方だから審判が見えやすいということだろうけど、このゾーンでも微妙な判定はあります。

ここも適用範囲内にしてもいいようには思います。


『適用外』の他の項目については、『審判の権威の失墜』や『試合が中断する』などのデメリット部分をいたずらに増長しそうなので、安易な拡大はせず現状維持でも良さそうです。


リクエスト判定後の誤審発覚

2018年に、ホームランを誤審する事件がありました。


ライトポール際への打球に対して、最初はファールと判定されました。

その後、攻撃側からのリクエストによってリプレー検証した結果、ファールの判定が本塁打に覆りました。

この試合はこれが決勝点になりました。

試合後、守備側だった方の監督から抗議があり、再度映像を確認した結果、審判がファールだったと「誤審」を認めました。

当然、ホームランの結果も、試合の勝敗も、覆りません。

『仮判定』の方が正しく、むしろリクエスト制度によって誤審が引き起こされてしまいました。


このときは映像は1種類のみしか確認していなかったそうで、審判団は『ビデオの操作ミスだった』と説明しています。

映像設備が球場ごとに異なっていること、審判によって確認方法にムラがあることを考えると、公平性には欠けていると言わざるを得ないようです。




リクエスト制度の評価

リクエスト制度はどの試合でも日常的に活用され、もはや当たり前の制度として定着しました。

導入時は賛否両論ありましたが、現場、OBや関係者、ファンからはおおむね好評なようです。

以前のような『納得がいかない』場面が減って、判定に納得がいくようになったからでしょう。

球場によっては協議中にオーロラビジョンでリプレー映像を流していて、その際は球場全体が大いに盛り上がっているようです。

そういう観点から行くと、導入は成功だったように思います。


個人的には、導入時から現在に至るまで、リクエスト制度は全面的に反対です。

もちろん誤審はあるし、モヤモヤする判定もたくさんあります。

それで勝敗の行方が左右されることもあります。

大事な場面であれば、悔しい思いをするのはなおさらです。


しかし、長い目で見れば、誤審で特定の球団だけが有利になり続けているわけではありません。

逆に、特定の球団だけが損をしているということもありません。

誤審やきわどい判定で「損」することもあれば、同じ数だけ「得」もしているはずです。

お互い様です。

プラスマイナスはゼロですね。

そう考えると、トータルで損も得もしないのであれば、リクエスト制度によるメリットはあまり意味がないのでは、とも思えてしまうわけです。

それより、『無駄な間が空く』『試合時間が伸びる』『審判の権威が失墜する』といったデメリットの方が大きいのではとさえ思ってしまいます。


球界全体で試合のスピードアップに取り組んでいるというのに、わざわざプレーが止まってファンが待たされるような制度を作ることに疑問を感じます。


特に応援団をやっていると、『無駄な間が空く』ことには敏感になります。

流れに乗って応援を送り続けるべきか、おとなしく固唾をのんで見守るべきか。

『判定は審判に従うから、それより早く試合を再開してくれ』、というのが本音であることもあります。


目先の運、不運は飲み込んで、審判のその場のジャッジに委ねるのも、スポーツのあるべき姿としては良いのではないでしょうか、と思ってしまいます。

まあ、これはあくまで僕個人の意見であって、応援団の総意というわけではありません。念のため。




まとめ

リクエスト制度のメリットとデメリットについて説明しました。


リクエスト制度によって、選手やファンのモヤモヤが解消される点は良いですが、試合が中断してスピード感が失われるのは大きなデメリットでもあります。


それに、リクエスト制度を使ってもなお判定の難しいシーンや、誤審が起こるケースも見られます。

完璧な解決策とはなっていないようです。


特定の個人やチームだけが著しく贔屓されているならともかく、誤審が平等に起こるなら、ある程度誤審を受け入れることも必要なようです。


以上、『リクエスト制度のメリットとデメリットと「応援団員の本音」』でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。