アピールプレイとは? ルールブックの盲点を併せて解説
おはようございます、元応援団員のハルカです。
アピールプレイをご存知でしょうか。
通常、野球では、何かプレイが起こるたびに審判がジャッジしてくれます。
ストライク・ボールの判定もそうだし、アウト・セーフの判定もそうです。
プレーヤーが求めなくても、審判は何かしらのジャッジをしてくれます。
しかし、そうではないプレイも存在します。
守備側がアピールしないと、ジャッジしてくれないというプレイが存在します。
これは『アピールプレイ』と呼ばれています。
では、具体的にはいったいどういうプレイがあるのでしょうか。
今回は、そんなアピールプレイについて取り上げて書いてみたいと思います。
アピールアウトとは
冒頭にも書いたとおり、通常はプレイに対して審判がアウトかセーフのジャッジをしてくれます。
しかし、守備側からアピールがなければ、黙認されてしまうプレイというものが存在します。
アピールをしなかったために、本来はアウトになるはずの走者がアウトにならない、とか、得点にならないはずの1点が入ってしまうことがあります。
これは、審判の怠慢ではありませんし、誤審でもありません。
『アピールがなければ、審判は無視しますよ』というプレイがあるのです。
たとえば、走者が正しく走塁をしていないことがあります。
このとき審判はそれに気づいても、注意したりアウトにしたりはしません。
黙認します。
守備側がそのことに気づいていなくて何のアピールもなければ、走者が正しい走塁をしていないことがなし崩しに認められ、そのまま試合が続行します。
一方、守備側が、『走者が正しく走塁をしていない』ことに気づいたら、審判にアピールしなくてはいけません。
具体的には、問題のある走者にタッチしたり塁にボールを送ったりします。
審判がこのアピールを認めたとき、走者はアウトになります。
アピールができるのは、次のプレイが始まるまでです。
攻守交替の場面では、守備側がファールラインを超えてベンチに戻ったときです。
時効を迎えた瞬間、守備側のアピールする権利は失われ、『正しくない走塁』はそのまま正当化されてしまいます。
アピールプレイの種類
では、アピールプレイにはどんなものがあるのか見ていきましょう。
アピールプレイは主に4種類あります。
まず、野球規則ではアピールプレイは次のように定められています。
野球規則の用語の定義の2
「守備側チームが、攻撃側チームの規則に反した行為を指摘して、審判員に対してアウトを主張し、その承認を求める行為である」。
さらに、野球規則5.09(c)には「次の場合、アピールがあれば走者はアウトとなる」として4つのケースについて触れられています。
(1)「飛球が捕らえられた後、走者が再度の触塁(リタッチ)を果たす前に、身体あるいはその塁に触球された場合」
(2)「ボールインプレイのとき、走者が進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき、その塁を踏み直す前に、身体あるいは触れ損ねた塁に触球された場合」
(3)「走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに帰塁しないとき、《一塁に帰塁する前に》身体または塁に触球された場合」
(4)「走者が本塁に触れず、しかも本塁に触れ直そうとしないとき、本塁に触球された場合」
それぞれ、もう少し説明します。
(1)「飛球が捕らえられた後、走者が再度の触塁(リタッチ)を果たす前に、身体あるいはその塁に触球された場合」
この問題に関連するのは、2種類のプレーがあります。
すなわち、
①フライアウトで飛び出した走者が塁に戻らない
②タッチアップの離塁が捕球よりも早い
が挙げられます。
①フライアウトで飛び出した走者が塁に戻らない
フライやライナーで走者が飛び出してしまうことはよくあります。
フライやライナーが捕球された場合、走者は帰塁する必要があります。
この時、帰塁する前に走者または塁にタッチすることで走者はアウトとなります。
頻繁に見かけるこのプレイは、じつはアピールプレイです。
②タッチアップの離塁が捕球よりも早い
タッチアップのスタートが捕球より早い場合もアピールプレイでアウトになります。
リタッチの義務に反している、という意味で、上記の①のプレーと同じ規定に抵触します。
(2)「ボールインプレイのとき、走者が進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき、その塁を踏み直す前に、身体あるいは触れ損ねた塁に触球された場合」
走者がベースを踏み忘れることがあります。
空過というやつです。
走者が空過した場合、野手が走者か該当の塁にタッチすることで、該当の走者をアウトにすることが出来ます。
『逆走』は、『フライアウトで飛び出した走者が帰塁する際の走塁』で起こります。
空過は、ホームランを打ったときも適用されます。
本来3ランだったものが2ランになることもあるし、ホームランの取り消しも起こります。
(3)「走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに帰塁しないとき、《一塁に帰塁する前に》身体または塁に触球された場合」
一塁は駆け抜けることが認められています。
駆け抜けたあとはすみやかに一塁に戻ることになっていますが、これを怠った場合にアピールプレイでアウトになります。
一塁を駆け抜けたあと、自分に代走が出されたことを知って、そのまま一塁に戻らずベンチに戻る、などでしょうか。
(4)「走者が本塁に触れず、しかも本塁に触れ直そうとしないとき、本塁に触球された場合」
(2)のベースの踏み忘れと似ていますが、本塁は個別の規定があります。
本塁が他の塁と違うことは、本塁は走者が触れた時点で生還になる点です。
規定では、「本塁に触れ直そうとしないとき」という条件が付加されています。
走者が本塁に触れようとしている限りは、アピールプレイは成立しないことになります。
その他のケース
他のケースでは、『打順間違い』があります。
打順を間違えた打者がその打席を終了したとき、守備側からアピールがあれば、その打撃結果に関わらず本来打席に立つべきだった打者がアウトになります。
まあ、プロでは起こらないと思います。
アピールができるタイミング
アピールできるタイミングについても定められています。
「投手が打者へ次の1球を投じるまで、または、たとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企てるまでに行なわなければならない。
イニングの表または裏が終わったときのアピールは、守備側チームのプレーヤーが競技場を去るまでに行なわなければならない」
ここでいう“競技場を去る”は、フェア地域を離れたことを意味しています。
第三アウトの置き換え
ここから、ちょっと難しいんですが、『第三アウトの置き換え』を見て行きます。
『ルールブックの盲点』と呼ばれる、ちょっとマニアックかつ理解が難しい概念をふんだんに含んでいます。
滅多に起こらないけど、マニアならみんな知っている『有名なレアケース(?)』です。
アピールアウトはタイムプレイになる
第三アウトの置き換えの前に、アピールアウトの前提条件を一つ説明します。
第三アウトがフォースアウト(打者走者の一塁アウトを含む)の場合、先に他の走者が本塁を踏んでいても得点は成立しません。
これに異を唱える人は、まあいないと思います。
例えば、2死三塁でショートゴロ。
ショートはゴロを一塁に投げて一塁で打者をアウトにしました。
打者が一塁でアウトになるタイミングより早く三塁走者がホームインしていたとしても、得点にはなりません。
それに対して、アピールアウトの場合は、タイムプレイになります。
第三アウトのタイミングより先に走者が本塁を踏んでいた場合、得点が成立してしまいます。
これを前提に、いよいよ『第三アウトの置き換え』を説明したいと思います。
具体例を示してみましょう。
第三アウトの置き換えの具体例
場面は1死一、三塁。
打者が飛球を打ち、走者はアウトカウントを間違えていたのか、ともに飛び出して走り出しました。
野手は、飛球をキャッチして2アウトになりました。
2人の走者は元の塁に戻らないといけません。
このとき、三塁走者はすでにホームベースを踏んでいました。
一塁走者は、二塁ベースを通過して三塁に向かうところでした。
一塁走者は慌てて一塁に戻りましたが、その前に一塁にボールが送られてアウトになりました。
これで3アウト。
守備側は全員ベンチに引き上げました。
さて、いま記載した場面で得点が入っていないと思いますよね。
結論を言うと、1点入ります。
三塁走者の生還が認められます。
リタッチしていないのにも関わらず、です。
このケースはリタッチ問題なので、アピールプレイです。
問題なのは、一塁走者も三塁走者も、両方アピールプレイになるということです。
今回の具体例のケースでは、守備側は一塁走者のアウトのみアピールしましたが、三塁走者に対しては何のアピールもしていません。
アピールプレイは、アピールせず放置すると、そのままそのプレイが認められてしまいます。
また、先ほど説明したように『アピールアウトはタイムプレイ』です。
三塁走者がホームを踏む前に第三アウトが成立していれば、得点は入りませんでした。
しかしこのケースでは、一塁走者のアピールアウトが成立するより前に三塁走者はホームを踏んでいました。
本件で得点を防ぐためには、守備側は三塁走者のリタッチについてアピールをする必要がありました。
すでに3アウトを取っていますが、そのうえで三塁走者をアウトにする必要があるということです。
これを、カッコよく言うと『第三アウトの置き換え』と言います。
この4つ目のアウトは、アウトカウントが欲しくてアウトにするのではなくて、三塁走者の生還を防ぐためのアウトと言えます。
初めて知ったとき、これはなかなか受け入れがたいルールだなと思いました。
野球漫画や高校野球で同様のプレイがあったので、それでご存じの方も多いと思います。
プロでも実際にあったそうです。
とはいえ、いずれにしてもなかなか見られない光景です。
サヨナラの場面での審判の所作
ちょっと話が逸れますが、サヨナラの場面では、アピールプレイに関連してこんな配慮がなされています。
サヨナラの場面では、審判はすぐに試合終了を告げることはありません。
これは、ある気遣いによるものです。
もし、サヨナラの場面でアピールの対象になるプレイがあったとします。
そのとき、審判員はアピール権が消失するまでは試合終了を告げることができません。
守備側が引き上げるまで、グランド内にとどまっておく必要もあります。
しかし、アピール権があるときだけそれをやってしまうと、暗にアピールプレイがあったこと守備側に仄めかすことになってしまいます。
そこで、サヨナラの場面では、アピール権の有無にかかわらず、守備側の選手が引き上げるまでは、審判はグラウンド内に留まっているというわけです。
まとめ
野球は、このように複雑で難解なルールが存在します。
第三アウトの置き換えなんかは、実際に見る機会はほとんどないでしょう。
僕も応援団として数々の試合を見てきたけど、こういうシーンに出くわしたことはないです。
自分が応援団のメインリードをしているときに、こんな難解なプレイが起こったら、絶対パニくってわけわからないことを言ってしまいそうです。
でも、プロでも高校野球でも事例があります。
起こりうるプレイである以上、応援団員としては確率が低いとしても備えが必要なわけです。
映画やドラマなどのフィクションでは、描き方によって色んなシナリオが作れそうですね。
実際、このプレイは何かの漫画で登場しているそうです。
作者の勉強熱心ぶりに感心します。
以上、『アピールプレイとは? ルールブックの盲点を併せて解説』でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。